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「コトワザウルス」~戦争一代、恨み百代

2015年4月17日(金)12時46分更新

 アラカンならぬアラサン世代の本サイトご隠居顧問が世に伝わる諺、名言(迷言?)、慣用句…などなど言葉の数々をクローズアップしてお届けする「コトワザウルス」。今回取り上げるのは…。かつて冷戦と言えば米国、ソ連(現ロシア)の専売特許だったが、さしずめ今は日韓が最右翼と言ったところか。そんな冷戦状態の日韓関係を感じながら、ご隠居はしみじみこう語った。「分かっちゃいるけどオバケと戦争はなくならない」と。

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日本の技術力が結集してつくられたゼロ戦は、それを操縦する技術があって初めて真価が発揮された。しかし戦争は決して許されるものではない(東京・靖国神社内の「遊就館」)

日本の技術力が結集してつくられたゼロ戦は、それを操縦する技術があって初めて真価が発揮された。しかし戦争は決して許されるものではない(東京・靖国神社内の「遊就館」)

 広島空港で信じられないような着陸時の事故が起こった。原因は事故調の調査結果を待つしかないが、最悪の悲劇を見ずに済んだのは不幸中の幸いだった。こうした事故が起きるたびに思い起こすのが、旧日本海軍の名パイロットで、アメリカの猛者たちから『SAMURAI!!』と恐れられた元海軍少尉(終戦時)坂井三郎氏だ。「アメリカの戦闘機・グラマンが100機で向かって行っても、坂井が操縦するゼロ戦1機を撃墜することはできなかっただろう」――戦後、元米空軍の戦闘機乗りが口をそろえて称賛する坂井氏は「ブリキで作った戦闘機」とヤユされたゼロ戦を〝名機〟として信頼し、こよなく愛し、これを自分の操縦技術で縦横無尽に操り、華麗な?空中戦を展開しては戦果をあげて敵も味方も驚かせたという。決して戦争を礼讃するつもりはないが、ゼロ戦をつくった日本の物作りの職人技はもちろん、自分の目と耳をレーダー以上に機能させて戦った操縦技術とその精神力が現在の日本ブームの元になっていると言ってもいい。イラク政府軍の必読書ともなっている同氏の著書『大空のサムライ』を世界中の操縦士にもぜひ読んでほしい。

◇自分たちが参戦したような口ぶり

 小3で学童疎開や空襲、小5で終戦、そして食糧難を経験した身としてはもちろん、戦争は絶対反対だが、歳を取るにつれ、いくら戦争を否定しても地球から戦争をなくすことはできないと諦め始めている。国と国、思想と思想、宗教と宗教、利益と利益などの対立が生じると、もうどうにも止まらなくなる。これだけは「話せば分る」で収まることは絶対にないので、だからこの世から戦争は無くせないのだ。

 これを実感したのが20年ほど前に取材で訪れた会津若松でのことだった。この土地の人たちが「前の戦争」と言うのは70年前に終わった第2次世界大戦のことではなく、何と146年前の戊辰戦争(慶応4年/明治元年)のことを指す。そして、この町の長老たちは「ついこの間の話」のように、あるいはまるで自分たちが参戦したかのような口ぶりで敗戦の屈辱を語るのだ。相手は薩摩藩、長州藩を主力とした新政府軍で、徳川幕府を守ろうとする奥羽越列藩同盟が武器の圧倒的な差もあって敗れた日本の内戦だが、その時の薩長連合軍の非人道的な暴虐ぶりは「未来永劫に許すまじ」と子孫に語り継いでいるのだという。

◇戦争は歴史を変える恐ろしさ

 そしてこの地方ではいまだに鹿児島県、山口県出身の人との結婚を許していない。もしそれでも結婚したいなら、会津の土を二度と踏まない覚悟をせよと言うくらい厳しいのだ。このことを初めて聞いた時、ほとんどこの世の話とは思えないほど驚いた筆者が、土地の有力者にこう聞いてみた。「120年前(当時から数えて)のことでもあるし、例えばテレビの企画として会津若松市長と鹿児島、山口両県知事が講和条約を締結する調印式を行う、と言うのはどうでしょうか」。その言葉が終わると同時にかの有力者が血相を変えて答えた。「本気で言ってるとは思いませんが、冗談でもここでそんなことは言わないでください」

 このコラムでも触れたが、韓国では423年前の秀吉の朝鮮出兵(1592年、文禄・慶長の役)の恨み、屈辱をいまだに忘れていない。韓国の人たちが日本に向けて言う「もっと歴史を認識して欲しい」という言葉は、いかに根深いものかが、会津の例でも十分理解できる。戦争は歴史を変えてしまうほど恐ろしい。というのに、なぜ無くせないのか? 人間はとてつもない業(ごう)を背負って生きているんだなと思う。


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