「テレビって奴は」~テレビの気になる言葉①
傘寿の大台まで、残り1年を切った本サイトご隠居顧問が物申す! いつも「テレビはわれら年寄りの最大の親友。だからこそのお節介な忠告です」というご隠居が最近、ニュースを見ていてふと感じたことがある。犯罪を防止するわけでもないのに〝防犯カメラ〟とは…。事件、事故が多い昨今、ご隠居はそれを伝えるニュースに注文を付けた。
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このところ、不気味で凶悪な事件が続いている。昨年7月、佐世保で起きた〝同級生殺人〟では逮捕された女子高校生が調べに対し「人を殺してみたかった」と供述しているし、同じく12月7日に自宅アパートで77歳の女性を斧で殴って殺害した女子大生も「人を殺してみたかった」と述べている。この二人に共通していることは、ともに成績優秀で、家庭的にも恵まれた環境で育っていること。そしてともに残虐な殺人とその後の遺体損傷を、まるで学校の宿題を片付けたように、生物学の実験レポートを書くための下準備を終えたように、淡々として取り調べ官に話していたという。動機なき殺人もここまで軽くなって来たか!
その恐怖も冷めやらぬ今月5日、和歌山の小学生が近所に住む男(22)に刃物で刺されて死亡した。殺人の動機についてはまだ調べの最中だが、最近の通り魔事件で複数の犯人が述べている「相手はだれでもよかった」に近いようなものではないか、と思われる。しかし、被害者の中学生の兄が犯人に追っかけられていたり、また犯人が被害者宅を覗き込んでいたとの目撃情報もあるので、先走った憶測はやめておこう。
◇国語の乱れにつながりかねない
前置きが重々しくなってしまったが、事件の分析や社会的な背景などの究明は専門家に任せて、事件が起きるたびに気になる言葉がある。一つは「○○駅の構内に設置されている〝防犯カメラ〟の映像を警察で調べています」「××マンションのエントランスの〝防犯カメラ〟から犯人を特定し…」などのように使われる『防犯カメラ』という単語だ。私のようなジジイがいくら吠えたって、もう既に日本語の一般名詞として定着しているようだが、犬の遠吠え、ごまめの歯ぎしり、ムダを承知で言わしてもらう。だれが言い出したかは知らないが、防犯とは文字通り「犯罪を防ぐ」こと。それも「犯罪を〝未然に〟防ぐ」というニュアンスさえ感じられる。ま、どっちにしてもタカが一介のカメラが、犯罪を防ぐ能力を持っている訳がない。「おいっ、そこのヒゲ面の親父、そんな悪いことやめないと警察を呼ぶぞ」なんて叫んでくれるはずもなく、ただ黙々と起こった事実を記録するだけなのだ。だから、防犯カメラとはカメラに対して失礼だし、国語の乱れにもつながりかねない。なるべく「監視カメラ」と正しく呼んでやろうじゃないか。
そしてもう一つ。大きな事件・事故には必ず出てくる言葉に「△△さんは搬送された病院で死亡が確認されました」というのがある。新聞社では昔、「ケツが一行あいちゃった。あと5文字ほど増やしてくれ」なんて几帳面な整理記者がいた。そんなとき「△△さんは間もなく死亡しました」という記述を前記のように字句を増やすことがあったかもしれない。でも、どうして死亡したことに病院の確認が必要なんだろう。これだってヘソを曲げて考えれば、まるで「心肺停止状態での搬送でしたが〝予期した通り〟間もなく病院で〝正式に〟死亡しました」と聞こえなくもない。こんな怖くて失礼な言い方はもうやめませんか?
ついでにもう一つ。お笑いタレントが言う「ほんのシャレで」「その場のノリで」と言っては仲間にいたずらを仕掛けて笑いを取るのもどうかと思う。これがいわゆる「アルバイト・テロ」を誘発しているフシがある。バイトのいたずら写真で店を潰された人を思うと、シャレやノリでいたずらを仕掛ける芸人は「犯罪教唆」で訴えたいくらいだ。嫌な時代になったもんだよね、全く。(この項続く)
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