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「テレビ紳士録」第4回~桂文枝

2015年3月30日(月)11時04分更新

 あの人、この人、どんな人?――本サイトご隠居顧問が、テレビで見かける気になる人物をクローズアップ。不定期連載「テレビ紳士録」の今回は、より一層イスごと転げ落ちるリアクションに磨きがかかった!? 落語界の重鎮をウオッチする。師匠のことが大好きだからこそ危惧すること…「古典は永遠に腐らぬが新作落語にゃカビが生える」…師匠! 聞いてはりまっか?

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マルチな才能で愛され続ける文枝師匠、隣は山瀬まみ(写真はABC朝日放送から)

マルチな才能で愛され続ける文枝師匠、隣は山瀬まみ(写真はABC朝日放送から)

「なんでもこいに名人なし」という諺がありますが、六代目桂文枝師匠を前にすると、この諺は全く力を失いますなぁ。このジジィが昔から見さしてもろうてます『新婚さんいらっしゃい!』は、1971年(昭和46年)1月に始まってすでに2222回、44歳を超える長寿番組で、ずっと司会を続けている三枝→文枝師匠の人気と実力は、畑と質こそ違えアメリカのエド・サリヴァン氏をとっくに凌いではりますがな。

◇大名跡の重圧?

 この番組の長寿の要因は、われわれの業界用語? でいう〝ヒューマン・インタレスト〟を巧みに衝いた点にあると思うのです。中でも特に気になるのが新婚さんの日常生活でしょう。〝ノゾキ趣味〟と言われれば真っ向から否定できない弱みは感じますが、本人たちが自分たちの意思でしゃべることを聞くだけですから、責められるとしたらむしろ出演者の皆さんの〝露出趣味〟の方ではないでしょうか。

 まぁ、そんなことはどうでもいいとして、やはり素直に司会者・桂三枝さんの話術、人柄、名人としての面白さが長続きした最大の要因としておきましょう。「新婚さんいらっしゃ~い」というオープニング・コールから始まって、面白すぎたり、話が際どくなったりすると、司会者が椅子ごと倒れたり、履いている高級そうな靴を舞台のセットに投げつけるなどのギャグももうすっかりお馴染みになっています。

 でも、長年のファンから言いますと、三枝から文枝になった途端にいつもの軽妙なトークに曇りが出てきたように思えるのです。三枝時代のフットワークが重くなった、そんな感じでしょうか。やはり、大名跡である桂文枝が重くのしかかっていたせいもありますよね。それと、米朝大師匠が89歳で亡くなってから、落語協会会長としての重責も感じているでしょうし…。あと、歳(72)のせいもあるのかなぁ。

◇気になるのは新作落語

 そんなこと、全く気にならないほどジジィが見続けているのは、「事実は小説より奇なり」と言うか「事実はオチより面白し」というか、出演者夫婦の奇想天外なエピソードがテレビに引き付けるのです。最近ではこんな夫婦がいましたっけ。《新郎が31歳、新婦が51歳(いずれも昨年12月の出演時)。新婦には二人の子供がいるが、新郎は彼らの幼馴染で中一のころから家族ぐるみの付き合いだった。しかも新郎の母親と新婦は仲のいい友達同士。この二人が地元の祭りの日の帰りにホテルで結ばれたのだという。親子ほどの逆歳の差婚だが、二人はいかにも幸せそうで、暗さはみじんもない》。

 かつて官能小説で満天下を興奮させた川上宗薫氏も宇能鴻一郎氏も、こんな組み合わせは思いもつかなかっただろう。だから年甲斐もなく毎週欠かさず見てしまうのですよ。

 あっ、そうそう、話は六代目桂文枝師匠のことでしたよね。諺の逆をいく「なんでもこいの名人」には違いないのですが、気になるのがご自分で作り、ご自分で演じる新作落語のことです。落語は何人もの名人上手が繰り返し演じるうちに話が磨かれて、やがて古典の仲間入りをするのですが、あなたの新作は誰かが演じていますか? そろそろ時間を割いて、自作の新作を見直したりしてみませんか。いえね、先日NHKで見たあなたの新作ですが、オチも含めて30分間、クスリとも笑えなかったもんですからね。つい、老婆心ながら失礼を申し上げました次第です。


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