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「食の安全」は永遠のテーマなり

2014年7月30日(水)11時49分更新

ある日のマック某店。ちなみに店員がすぐ気づいて、張り替えられた。ただ今回の食品スキャンダルはなかなか修正できそうにない

ある日のマック某店。店員がすぐに気 づき、張り替えられた(写真左上)。ただ今回の食品ス キャンダルはなかなか修正できそうにない

 上海福喜食品の食品スキャンダルが一気に火を噴き、新聞、テレビはもちろん、週刊誌でも大々的に取り上げられている。24時間稼働の監視カメラ設置や監視人の常駐など、さまざまな対応策が議論されているが、そもそも食の安全の確保は可能なのか。検証してみた。

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 日本の食品自給率はカロリーベースで39%でしかない。そのため不足分は海外に頼るしかなく、特に安価で大量生産が魅力の加工食品は、その最大生産拠点である中国に頼らざるを得ないのが現状だ。

 ところが、その中国でずさんな食品管理が表面化。30日、その矢面に立たされていた日本マクドナルドのサラ・カサノバ社長が「大切なお客様に対し多大なご心配とご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」と陳謝した。

「謝るぐらいなら最初から徹底管理した食品を提供しろよ。まして中国製品なんて使うなよ」とツッコミが入りそうだが、食品自給率を考えれば、中国依存は仕方がない現実なのだ。

 ただ表面化したのが今回、たまたま(意図的との話も出てきているが…)中国のテレビ局の潜入取材があったためで、これまでもずさんな管理体制だったことは容易に察しが付く。過去はどうだったのか、不安は全く払しょくしきれていない。

 もちろんこれはマクドナルドだけの問題ではない。日本の外食産業は、もはや中国なくして存在できないと言われるほどに、その依存度は高い。とりあえずマクドナルドでは問題となったチキンの加工はすべてタイで行うと決めたようだが、じゃあタイなら大丈夫のか、という懸念もある。

 実際、今回の食品スキャンダル発覚直後に、イギリスの食品工場でも床に落ちた鶏肉を不衛生に管理する映像が公開され物議を醸している。国の信用度の問題でことさら中国がクローズアップされているだけで、これがイギリスだろうがタイだろうが、はたまたブラジルだ、アメリカだと言われたところで全面的に信用することは不可能といっても過言ではない。

 海外だけではない。「日本で加工されているから安全」、「日本で提供されているから安心」と言われても胸を張れない昨今。昨年も冷凍食品の製造販売会社アクリフーズの群馬工場で、従業員が冷凍食品に農薬を混入させた事件は記憶に新しい。2008年には当時、大阪で超高級料亭と言われた船場吉兆が客の食べ残しを使い回したとして大問題になり、〝女将のささやき記者会見〟も話題となった。結局、前年に引き起こしていた賞味期限切れの惣菜販売や鶏肉の産地偽装問題などもあって、最終的に同店は廃業した。

 食品偽装はそれこそ枚挙にいとまがなく、日本も決して信用できるとは言い切れない。

「この上海福喜食品の問題が出てから、ある回転ずしチェーンに行ったんですよ。まあ代用魚なんて当たり前の世界だっていうのは仕方ないと諦めているんですが、生ものだけに、どんなところから仕入れているのか本当に気になりますよね。マックのように火が通っているわけではないですし。まあそれでもおいしければいいと思って食べていたんです。ところが、急に目の前のすし職人が使っている布巾が気になり始めたんですよ」というのは東京都内で塾講師をする岡崎雅昭さん(29)。

「水道水でしょっちゅう洗っているのはいいんですが、たった1枚の布巾で盛んに目の前のまな板や包丁を拭く。意外と汚れているんですよね。その布巾でぬぐった手ですし握られて大丈夫かな、って…。すしはおいしかったし腹も壊さなかったですが、気になっちゃって。でもあまり気にし過ぎると、外食ってできなくなるんでしょうね」

 まあ不衛生と言っても、福喜食品のずさんな管理態勢と一緒にしたらかわいそう。

 ただ第三者に料理を作ってもらったり、食品を加工してもらうには、相手を信用するしかないのもまた事実。

 良くある身近な話として、気に入らない上司のお茶にツバや雑巾水を入れたりする部下がいるのはもちろん、中には青酸化合物をいれて…なんてこともある。

 もはや食の安全は工場や国を変えただけで防げるものではない。

「24時間、人を常駐させるなり監視カメラを設置するなど方法論はありますが、人が介在すれば必ず不正がはびこります。ホコリ一つ入り込まない密閉空間で、それも人の手が一切介在しない全行程オートメーションの工場でも作らない限り、本当に食の安全は担保できないでしょうね」というのは北関東の食品工場に勤務する幹部従業員。

 ただそのシステムとて、動かすのは人の手。やはり最後は飛行機に乗ってパイロットに命を預けるのと同様、提供する人の良心を信用するしかない。食の安全…永遠のテーマであることだけは、間違いなさそうである。


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