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「TV妖語」~する方針です

2015年2月24日(火)01時05分更新

 かつて某新聞社で鬼デスクとしてその名を轟かせ、胃腸病院に送り込んだ部下は星の数ほど…は言い過ぎでも、とにかく厳しかった。今と違って30年ほど前、当時の手書き原稿は赤ペンで真っ赤っか。「てにをは」はユウに及ばず、読む前から「字が汚い」とビリビリにされた原稿用紙は、哀れ丸めてゴミ箱にポイっなんてことも。そんな本サイトご隠居顧問は、テレビから流れてくるアナウンサーたちの耳障りな一言二言、いや多言? に「どうなってんだ! 最近のテレビ用語は!」と噛み付いた。皆さんは変幻自在に繰り出される「TV妖語」に、どれだけ気づいていますやら。

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「出火原因について調べる方針です」っておかしくない?(写真は本文とは直接関係ありません)

「出火原因について調べる方針です」っておかしくない?(写真は本文とは直接関係ありません)

 あなたはテレビのニュースを視聴していて「あれっ? その言い方、ちょっとおかしくないかな」と思うことないですか。ないとすれば、あなたはほぼ正常な常識人です。どうかご安心ください。また、別の言い方をさせて貰えば「テレビのアナウンサーが言うことに間違いがあるわけないじゃん」と言ったタイプの、とても素直なお方なのでしょう。でも、筆者のようなへそ曲がりとなりますってぇと時々引っかかるんですよ。彼ら、彼女らが何気なく使う言葉がね。本当はあっしだって、そんな細かいことにいちいち目くじら立てて、もっと大事なことを見逃したくはありませんのですが、そこが性格というもんでして…。

◇おかしな「修飾語」みたいなもの

 例えば、よく耳にするのに、こんなのがあります。①(女性アナ)「…東京消防庁ではこの火災の出火原因について詳しく調べる方針です」。あるいはこうも言いますネ。②(男性アナ)「連続放火事件について警察は被疑者の余罪について、さらに追及する方針です」。方針という言葉をナゼ太字にしたか、お分かりでしょうか。「分からない」とおっしゃるのが普通の人、「どこがおかしいんだ」と言う人はちょっとだけへそ曲がりの素質がある人です。じゃあ申し上げましょう。方針がナゼおかしいのか。消防署にしても警察にしても、「出火原因を詳しく調べ」たり「余罪を追及する」のが当然のお仕事で、方針もへったくれもないことなのです。テレビ各局のアナウンス室におたずねしますが、警察や消防署が事件や火災の記者発表のたびに、いちいち「今のところ詳しいことは分かっていませんが、これから調査(あるいは聴取)していく方針です」と言っているのでしょうか。以後さらに詳しい原因や余罪を追及するというのは、決まり切った彼らの義務なのであって、アナ氏のいう方針なんて当局にとっては大きなお世話なのですよ。

 察するにこれは火災や事件に重みを付けるための「修飾語」みたいなものであり、かつニュースの読み終わりをリズミカルにするための「ナンセンス・シラブル」のつもりなんでしょう。でも、①の場合なら「~出火原因について詳しく調べています」で十分だし、②の場合も「~さらに追及しています」とすべきです。もし、方針を付けないと担当当局があと知らん顔しちゃうとしたら、それこそ大問題でしょう。

◇意味のない言葉の連結器

ついでにもう一つ言わせてください。ニュース番組やバラエティーでよくあるのですが、現場に出向いたアナやリポーターのしゃべりに切れ目がなくなりやすいこと。「けれども」「ですけど」「けれど」という接続・助詞を挟みながら、言葉の切れ目なしに話がつづくのは、少なくともあっしら年寄りには聞き苦しいのですけれど、何とかなりませんかね。実例を挙げたくても、とてものことにそんな長い作文はできません。「いま、現場に来ているんですけれど、被災者の方々がつかれた体に鞭打って頑張っていらっしゃいますけれど、あっ、いまようやく救援隊の方たちが到着しましたけれども…現場からは以上ですけれど

 本来、「Aだと思ったけれど、Bだった」というふうにけれどの後にはAに対峙する言葉が入らなければおかしい。それが、まるで意味のない言葉の連結器のように使われているので年寄りはどっと疲れるのですよ。ミッキー・スピレーンの推理小説のように歯切れよく…とまではいわないけれども、もう少し短めに句読点を付けてリポートして欲しいんですけれども…。 あれーっ? けれど病が移っちゃった。


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