連載『テレビって奴は』第4回~KENZAN!っていったい…~
あと○年と●ヵ月で傘寿を迎える本サイトご隠居顧問が物申す! テレビを見ていてふと気づく。タレントたちにとどまらず、アナウンサーや司会者、言葉のプロたちが日々繰り広げる(繰り返す)誤用の数々、笑って済ませていいはずはない。顧問曰く「テレビはわれら年寄りの最大の親友。だからこそのお節介な忠告です」と。ご隠居顧問の小噺連載『テレビって奴は』の今回は…。「なんのたれがし、ここにけんざん!!」って、一体全体何の験算?
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ここ1年くらい前から耳障りな叫び声は聞こえなくなってホッとしているが、番組だったかCMだったか、正確には記憶にない。覚えているのは元気のいいタレントが「(画面に現れて皆さんに)お目にかかっています」という意味で使っていたらしい。「何の誰某KENZAN!」って大声で叫んでいるんで、思わず読んでた新聞から目をテレビ画面に移したら、まぁ驚くじゃねぇか、でっかい字で「見参!」ってあるじゃないの。CMだから叫んでいた人物はアナウンサーではなく、大声の出せるお笑いタレントだった…としておこうか。
◇ケンザンって言われてもねえ
バックに車(貨物車だったかなぁ)があったような気もするので、ひょっとしたら、トラックのCMだったかもよ。字面からすりゃぁ見学の(けん)に参拝の(さん)だから「けんさん」と言わなかっただけ偉いと思う。でもさぁ、KENZANって半端に読まれても褒める訳にゃいかねぇのよ。おいら年寄りにとってKENZANってのはソロバンの稽古でさせられる験算か、生け花で使う剣山くらいしか浮かんでこねぇもの。ひょっとして、剣豪物のアニメで豪傑がよくこのセリフを「KENZAN」と叫んでいたのかもしれないけど、おいらジジイたちは、いくらテレビ好きでも、最近のアニメまではあんまり見てねぇもんね。
だから、現代のアニメではどんな場面で「見参」というセリフが使われていたのか知る由もない。けど、70年ほど前の剣豪マンガや講談では豪傑同士が対決する場面で「やぁやぁ我こそはその名を聞けば泣く子も黙る三十六人斬りの荒木又右衛門なるぞ! いざ尋常に勝負!」なんぞと言って敵陣に割って入る前に、自陣にかけつけた時、主君や味方の武将たちに「荒木又右衛門ここに見参!」(私めただいまおそばに参上つかまつりました)とまぁ、こんな具合に使ったものらしい。おいら戦国時代に居合わせたわけじゃないから、100%自信はないけどね。
◇見参の「見」に括目せよ
おっと、では正しくはどう読むのかを、まだ言ってなかったっけ。そう、正しくは「GENZAN」と濁らせて読む。試しに岩波書店の『広辞苑』で「けんざん」と引いてみると「けんざん⇒げんざん」つまり「けんざんではなくげんざんの項を見よ」とありましてね。
「現在」の現は同辞書によると「見在」と表記することもあると出ているように、昔のお侍さんたちは「見」をGENと読むことが多かったんでしょうね。
ほら、テレビの関係者やタレントさんなら一度は体験したことあるでしょうが。ちょっと洒落た店に入ろうとしたら「すんまへん。この店は一見(いちげん)さんはお断りしてますんで。申しわけおまへんなぁ」なんて、体よく追い返されたなんてこと、おましたやろ? あなたが言われたあの「見(げん)」どすがな。
(本サイトご隠居顧問=次回をお楽しみに)
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