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カジノをつくるならラスベガス型「ジャパナイズ・カジノ」

2014年10月8日(水)02時09分更新

 臨時国会も始まり、通称「カジノ法案」と呼ばれる「IR推進法案」(以下IR法案=正式名称・特定複合観光施設区域の整備の推進に関連する法律案)が成立する日が刻一刻と近づいてきた。本サイトではカジノ事情に詳しい「21世紀エンターテインメントを考える会」代表の井狩友亨氏の話を聞き、そして改めて提言する。日本でカジノをつくるのなら中途半端なカジノだけは絶対つくるな。ラスベガス型の一大アミューズメント基地「ジャパナイズ・カジノ」をつくって日本文化を世界に発信するべきと。

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故・市川團十郎さんはかつて日本発の「ラスベガス型カジノ」での歌舞伎公演を熱く語っていた

故・市川團十郎さんは、かつて日本独自の「ラスベガス型カジノ」と歌舞伎のコラボを熱く語っていた

◇ジャパニメーションや唐獅子旅館、怪談旅籠

 何度か本サイトにも登場する井狩氏は、これまでも「日本にカジノを作るならラスベガス型。大小にかかわらず、1軒や2軒のカジノをつくるくらいなら、合法化しないほうがいい」と言い続けてきた。

 その井狩氏が改めて提言するのは、カジノの一大アミューズメント基地としての展開。

「ラスベガスがそうであるように、大人も子供も楽しめる一大歓楽街をつくる。それも東京ディズニーリゾートやユニバーサルスタジオを足してもまだ足りないような規模のテーマパークをつくる。そこに20~30軒のカジノホテルを展開させる。ただ展開させるだけではダメ。テーマは日本。さしずめ〝ジャパナイズ・カジノ〟を作って、広く世界に日本文化を発信する」

 具体的に井狩氏が思い描くカジノ像はざっと、以下のようなものだという。

 漫画やアニメ…いわゆるジャパニメーションをテーマにした一角ではエヴァンゲリオンやガンダム、ドラえもんや、今時でいえば妖怪ウォッチなどのカジノホテルがあり、それに沿ったショーも展開される。また江戸時代にタイムスリップしたような一角(日光江戸時代村ふう)では天守閣を模したカジノホテルがあり、もちろん出し物は花魁ショーやチャンバラショー、忍者ショーなどだ。また昭和初期の日本をテーマにした一角では丁半バクチのできるカジノホテル「唐獅子牡丹旅館」があり、そこではさらしを巻いた高倉健ふうの角刈りのお兄さんや、もろ肌脱いだ〝緋牡丹のお竜〟ふうのオア姉さんがツボを振る。カジノホテルを移動する手段として、駕籠(かご)や人力車が当然重宝される。お化け屋敷ふうの「怪談旅籠」があってもいい。BGMには「ヒュードロドロ」でもいいし、井戸の中からお菊さんが皿を「いちま~い、にま~い…」と数えてもいい。

 もちろん現代日本の最新技術を網羅したエリアでは、ディーラーがすべてロボットというのもありだ。

◇故市川團十郎さんのアツい思い

 最近、IR法案を推進する超党派の議員で組織する国際観光産業振興議員連盟(通称IR議連)顧問の下村文科相が一部朝刊紙の取材に答え、2013年2月、肺炎のため66歳の若さで亡くなった歌舞伎役者の市川團十郎さんと対談した時、「『IRにぜひ歌舞伎場をつくってほしい』と訴えられた」と語った。実は團十郎さんは亡くなる前年の12年3月、東京都内で開かれたカジノイベントに特別ゲストとして招かれ、公の場でカジノに対する持論を展開させている。米国やオーストラリア、フランスやドイツ、オーストリアで海外公演を行い、その合間、合間に各国のカジノを経験した。「アメリカ型とヨーロッパ型のカジノで随分と違う印象を持ちました」という團十郎さんが理想としたのが井狩氏同様「ラスベガス型」だ。

 日本でカジノができるのならエンターテインメント主体のラスベガス型カジノをイメージしていた團十郎さんは「その中で日本の古典が果たす役割というのは大変多いと思っております。私どもが携わっている歌舞伎だけではなくて能、狂言、文楽…そういうものもあります。それから祭り。四国の阿波踊りとか(秋田の)竿灯まつり…、まだまだ他にもありますが、永続的に日本文化を紹介する場所になってもらいたいと思っております」と熱く語っている。

 ただその一方で「カジノは日本語で言えばバクチ場です。日本の多くの方は、あまり好印象は持っていないと思います。でも考え方次第では『諸刃の剣』。いろいろ問題点もあるが、逆に素晴らしいところもある。ですからハッキリと法的に整備をしてもらって、うまくいい鞘(さや)に入るよう(関係者には)努力していただきたい」と語っていた。

 井狩氏も当日、目の前でその話を聞いていた一人だ。

「基本的な考え方が同じだったので、いつか機会があればジックリとお話をお聞きしたかった。歌舞伎界はもちろんのこと、カジノ合法化の流れの中でも大変惜しい方を亡くした」(井狩氏)。

 歌舞伎に能、狂言に文楽、さらには各地に伝わる伝統的な祭り…歌舞伎座型のカジノホテルがあってもいいし、今週は青森ウイークとなれば街中を青森ねぶたが練り歩き、福岡ウイークでは祇園山笠、はたまた全国神輿対決だ…と日本文化を国内外の観光客に徹底的にPRする。

「安倍首相はじめ、与党自民党を中心に今国会でも『日本は観光立国を目指す』と言っているのだから、カジノを合法化するにも徹底してやらなければいけない。中途半端なカジノ場をつくるくらいなら、合法化は絶対すべきではない。何より、團十郎さんがおっしゃったように、それだと単なる〝バクチ場〟。国民のコンセンサスなんて得られやしない」(井狩氏)

◇「自分の利益が第一」では国民は納得しない

 このサイトのカジノ関連記事でも触れたことがあったが井狩氏の「ラスベガス型カジノ」論に対し、「そんな夢みたいなカジノなんかできっこない」「絵に描いた餅」「理想論にもほどがある」とカジノ専門家と称する評論家諸氏から否定的な意見はよく聞かれる。

 これに対し井狩氏は改めてこう反論した。

「これは声を大にして言えること。日本という国は一部の特権階級が、自分たちの既得権益や利益を追求してきたために、本来、簡単に進む話も進んでこなかった。今回のカジノ合法化の流れも、果たして純粋に日本の将来のためとか、観光行政で日本を立て直すためと考えて動いていることなのか…甚だ疑問が残る。日本の縦割り行政だって結局は省庁間の利益、権益争い。そういうものが一切なくなれば、カジノを核に日本を一大レジャースポットにするという目標は間違っていないし、決して難しいことではない。政財界も、さらにそれに群がるカジノ評論家と称する専門家たちも、まずは自分の利益を第一に考えているようでは国民のコンセンサスなんて得られっこない。それを肝に銘じたうえで法案審議、さらには合法化後も考えていただきたい」

 さて、カジノ法案の審議入りも秒読み段階。果たしてどう決着し、今後どう展開していくか。本サイトは今後とも折を見て特集していく予定だ。


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