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April , 2024
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果たしてどうなる万引き犯の顔公開 今日が審判の日

2014年8月12日(火)01時18分更新

 

 果たして審判はどう下されるのか。東京・中野に本社のある「まんだらけ」(古川益蔵社長)が自社のホームページ上で行った万引き犯への警告は、賛否両論渦巻き、大きな波紋を呼んでいる。そして警告のタイムリミットされた12日がついに来た。現在午前1時、まだ審判は下されていない。

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まんだらけのHP上に公開されている警告文

まんだらけのHP上に公開されている警告文

 中古の漫画本や懐古グッズなどの販売で有名な「まんだらけ」。北は北海道から南は福岡県まで店舗展開する同社が、HP上で「警告」のタイトルで万引き犯に呼びかけを行ったのが8月5日のこと。前日の4日、同社の旗艦店である「まんだらけ中野店」4階にあるビンテージおもちゃ&グッズ専門売り場「変や」で、25万円相当の「ブリキ製の鉄人28号のおもちゃ」が盗まれたことを受けてのことだった。

◇法律の専門家の多くは顔公開を批判

 警告には「1週間(8月12日)以内に返しに来ない場合は顔写真のモザイクを外して公開します」の文章とともに、防犯カメラの映像から抜粋したモザイクの掛かった万引き犯とされる男性の姿が写し出されていた。

 これにまず反応したのが法曹界。法律の専門家である多くの弁護士から「犯人公開は速やかにやめるべき」「行き過ぎ」との批判の声が上がった。

 東京都内のある弁護士は、絶対に許してはいけない行為としてこう話す。

「警察ではない権利者が、いくらその権利が自分にあるからといって、犯人を公開しようとするのは〝自力救済禁止の原則〟に反する。この原則を反故にしてしまうと、無秩序な世の中ができてしまい、法治国家としての体面が保てなくなる」

 もし公開してしまえば「その時は、まんだらけ側が脅迫罪や名誉棄損罪に問われることになる。捜査は警察に任せるべき」(同)という。

◇日本は万引き天国

 ただ一般論となると話は別。もちろん店側の行為を批判する意見もそれなりにあるが「盗むやつが一番悪い。店側を批判するなんて本末転倒」「公開されたくなければ、(盗品を)返しに来ればいいだけの話」「抑止力になるからいいんじゃないの」と意外と好意的に見ているケースが多い。ネット上でも賛否両論飛び交うが、どちらかというと賛成のほうが多いように感じられる。

 とくに小売店の関係者となると、賛成意見がさらに増える。

「うちはヘタすると、1カ月の売り上げのうち2割を万引きで失うこともある。知り合いのところでは、万引きが原因で潰れたところもありますからね」というのは横浜市内のある雑貨店の店主だ。

 日本は世界に名だたる万引き国家。年間の被害総額は4500億円とも5000億円とも言われている。実際、表には出にくいが、万引きが原因とみられる倒産や閉店も少なくない。

「ウチのすぐ近くに悪がきの多く通う高校があってね。防犯カメラの証拠をもとに、学校にも注意したいだけど、仕返しが怖くて。だからまんだらけさんの今回の措置は注目しています」(関東圏のあるコンビニの店主)

◇判断が難しい面も

 ただこういう意見もある。

「もし、今回の一件が世間的に支持されて、他の店舗でもできるようになるとしますよね。それはそれでちょっと危険なような気がします」というのは都内の私立大学に通う男子大学生だ。

「僕らの中学時代にもありましたけど、いじめられてたやつが、いじめてたやつらによく万引きさせられていましたからね。二次被害じゃないですけど、元々の被害者がさらに被害に遭うってことにもなりかねないですよ」

 ある医療関係者は「もしその犯人とされた人物が精神疾患の影響で万引きしたとしますね。責任能力がないと判断されれば、無実の人をさらすことになる。そのあたりはどうなんだろう」と疑問を投げかける。

 確かに、判断が難しい場面もある。

 2003年には、万引きがもとで、このような悲しい事件も起きている。

 万引き被害に度々遭っていた川崎市内のある古書店では、その日も漫画本6冊を上着に隠して店外に持ち去ろうとした中学3年生の男子生徒(当時)がいた。防犯カメラで一部始終を見ていた店主は、この生徒を呼び止めたが連絡先を教えない。致し方なく警察に通報し、川崎署員が駆け付けた。署員が警察署まで任意同行しようとしたところ、この男子生徒は突然逃走、踏切に入ったところで電車にはねられ死亡した。

 その後、この店主は「人殺し!」「子ども相手に警察呼ぶなんてひどすぎる」「もっと配慮があってもよかったんじゃないか」と様々な批判にさらされる。店主は自分の行為を悔い、そして結論を出した。

「当店がここで営業していたことにより、尊い命が失われたことについては、重く受け止めております。返す言葉がございません」「一人一人に親御さんと同じような愛情を持った寛容な対応をできなかったことをお詫びいたします」と謝罪文を店頭に張り、閉店した。直後には「店主は何も悪くはない。被害者なのにかわいそう」などと同情が集まった。

 万引き犯の扱いの難しさを表すには、余りある事件だったといっても過言ではない。

◇万引きは立派な犯罪

 万引きは刑法235条の窃盗罪に該当し、10年以下の懲役、または50万円以下の罰金に処するとされている。決して許される犯罪ではないことは明らかなのだ。前出の横浜市内の雑貨店主は言う。

「犯罪者にも確かに人権はある。ただ、万引きはどうしても〝その程度の罪〟とされ、捜査当局も本腰を入れて捜査なんてしてくれない。知人の店が潰れたのだって、一度の被害額はせいぜい数千円、数万円、そんな程度。でもそれが積もり積もれば、被害者の人生を狂わせることもある。万引きは成功すればまたやるし、許せば増長する。絶対許せない行為だ」

 万引き被害と無縁だと、どうしても「たかが万引き」と思ってしまうかもしれない。ただ当事者にとっては死活問題。だからこそ、まんだらけの行為が英断なのか、愚行なのか、しばし成り行きが注目される。


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