不定期連載『テレビって奴は』第3回~「小春日和」と「肌寒い」~
あと○年と●ヵ月で傘寿を迎える本サイトご隠居顧問が物申す! アナウンサーや司会者、言葉のプロたちが日々繰り広げる(繰り返す)誤用の数々、笑って済ませていいはずはない。顧問曰く「テレビはわれら年寄りの最大の親友。だからこそのお節介な忠告です」と。ご隠居顧問の不定期連載『テレビって奴は』は、いよいよ筆…いえいえ古希の手習い? で覚えたキーボードが、一段とリズミカルな音を立てて文章を奏で始めた。早くも第3回を迎える本コラム、本日は「女子アナの季節感 『小春日和』と『肌寒い』」に焦点を当てた。こんな「誤用」は「御用」ですぞ!
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もう、あれから20年以上は経つかな? えらい古い話で恐縮だが、その頃の天気予報(今は気象情報とかいうらしいけど)の担当は、まあほとんど若い女子アナが任されていたと記憶する。天気予報というのは、読む原稿の長さといい、政治・経済番組のように難しい単語もなく、新人の練習台としてはうってつけのものだった(と思われる)。
◇小春日和の時期は?
今では“アナウンス室長”の肩書が付いていそうな熟女アナたちがまだ初々しかったころの話だから、もう本人には迷惑はかからないと思うが、彼女たちは得意げにこう言った。
「今日から3月に入りましたが、シベリア高気圧が後退し太平洋から暖気が流れ込んでポカポカ暖かい小春日和(こはるびより)となるでしょう」
いまなら小学生でも気が付くだろうが、当時、これをおかしいと指摘した人は「これのどこがいけないの?」と周りから総スカンを食らったそうだ。えっ? あなたも分からないの?
もう種明かしするのも気恥ずかしいが、“小春”って春が付くけどさ、実は11月の別称(愛称)だっていうの知ってました? でもって、この月のポカポカ陽気の日を小春日和と言ったわけ。昔の人は言葉に関してはとてもお洒落だったし、ことのほか季節感を大事にしたわけよ。日本人だけでなくアメリカでは小春日和を“インディアン・サマー”、ドイツでは“貴婦人の夏”と呼んで特別扱いしているくらい(といって、このジジイがとくに物知りだってことをひけらかしているつもりはありませんぜ)。
◇季節感のないテレビのスタジオ
あの時代にもう一つ気になることがあったっけ。やっぱり、これも女子アナだ。1~2月のくそ寒い時期の天気予報で「今日は大陸の高気圧が勢力を強めるため、肌寒い一日となりそうです」
真冬に肌寒いという季節感を持つ有名大学出の女子アナは、むかし井戸端の会議にしか楽しみを持てなかった長屋のおかみさんたちにも大笑いされただろうよ。辞書を引くまでもなく、肌寒いとは、晩夏から秋にかけてのちょいと冷んやりした日に使う言葉だってことを、昔のおかみさんたちは学校ではなく「肌で身につけていた」ってことです。
あえて女性の味方として弁護しておきましょうか。上記二つの「誤用」は本人の責任というより、そのような原稿を書いた記者が悪かったのだ…と。そして今では二つとも正しく直されています。
それにしてもテレビ局のスタジオってところは全く季節感に乏しいね。ご存知のように真冬でもノースリーブでマイクの前に立つ女子アナ諸君やタレントたち。また、真夏には熱帯より暑い照明に対抗して異常に下げた冷房から身を守るためセーターを着込んだ出演者たち。これで「環境保全のため、省エネにご協力ください」とはとても気が咎めて言えないだろうよ。 ? (本サイトご隠居顧問=次回をお楽しみに)
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