妖怪ウォッチ人気で客足回復のマック 本当に大丈夫？
マックが「妖怪ウォッチ景気」に沸いている。一時、中国の期限切れ鶏肉使用のチキンナゲット問題などで大打撃を受け、青カビならぬ青息吐息の同社だったが、一気に息を吹き返した。「もしかしたらマックは潰れるんじゃないか」と危惧していた多くのマックファンもホッと胸をなで下ろしているい違いない。ただ一部には、「よもや潰れることはないだろうが」と言いながら、同社の経営を厳しい眼で見る向きも少なくない。マックは大丈夫？ 改めて検証してみた。
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「妖怪ウォッチ」の子ども向けセットメニューが大人気のマックだが…
日本マクドナルドホールディングスは先日、８月の既存店ベースでの売上高が２００１年の上場以来、対前年同月最大の落ち込みとなる２５・１％減を記録したと発表した。売上高の前年割れは７カ月連続、来客数（１６・９％減）にいたっては実に１６カ月連続の減少となった
この数字を見て「食の安全・安心が叫ばれる昨今、『マックのハンバーガーは本当に安心して食べられるのか』、『マックに裏切られた』と感じた消費者がかなりの数に上ったという結果だ」と指摘したのは大手信用情報調査機関幹部のＮ氏。
◇オマケの妖怪ウォッチが大人気
説明するまでもなく、７月下旬に発覚した中国・上海福喜食品の期限切れ鶏肉使用問題が大きく響いており、同社の信用失墜を招いたのは記憶に新しい。と思っていたら、先週末の５日、マックから期間限定（～９月１８日＝２４時間営業店は１９日午前４時５９分まで）で発売された「ハッピーセット」が爆発ヒット。発売５日間で予定売り上げの約３倍を記録し、急きょ追加生産を発表したほど。
このセット、チーズバーガー（もしくはプチパンケーキ）とサイドメニュー（スイートコーンなど）にドリンクが付いた子ども向けセットメニューで、主役はもちろんハンバーガーだが「オマケにつられて買いました」（小学２年生の男児を持つ東京都内の主婦Ａさん）。
以前、本サイトの井戸端談義でも話題に上った、いま子どもたちに大人気のキャラクター「妖怪ウォッチ」。ハッピーセットにはこの妖怪ウォッチのオリジナルカード（全６種類）が付いてくるのだ。まさに売上高減少に苦しむ同社の救世主のような存在になっており、実際、株価にも大きく貢献した。終値ベースで２５５４円だった先週末の株価が、週明け８日には３・６％増の２６４６円、１０日には２７３０円まで上昇した。１１日は２６７５円とやや下げ落ち着きを取り戻したが、それまでの１週間は２５３０～２５６０円あたりをウロウロしていたことを考えると、相当大きな好材料だったようだ。
◇業界のガリバーも大きな転換期
ただ前出の主婦Ａさんのように「オマケ」につられて来店したケースが少なくなく、セットメニュー販売終了後がマックにとって本当の正念場だ。
「つい１年半くらい前まで、マックは間違いなくデフレ時代の勝ち組の１社だった。ところがデフレ戦略に陰りが見え始め、迷走している中で鶏肉問題が追い打ちを掛けた。１年前に鳴り物入りで就任したカナダ出身の女性社長（サラ・カサノバ社長）も、本来イメージアップにつながるはずが、鶏肉問題の処理で後手後手に回ってしまい、マックの信用をさらに落とす結果につながった。心配なのは、妖怪ウォッチで人気といっても、所詮はオマケ。マックの信用回復にはつながらない。大事なのは主力商品であるハンバーガーをどう売っていくか。それを見誤ると、いくらマックとは言え相当厳しい状況に立たされる」（前出・Ｎ氏）。
まさか、マックが潰れたりしないかしら、などと心配する声が聞こえる一方で、筋金入りのマックファンを自認する千葉市在住の２０代後半の会社員Ｂさんはこう言う。「マックが潰れるわけないでしょう。だいたい日本人は忘れっぽい性格ですからね。鶏肉問題だって、いまは解決したわけだし、そのうちまるでなかったように忘れて、いつものマックに戻りますよ」
専門家のＮ氏も「さすがにそこまではいかない」としながら、冷静に分析した。
「今後、既存店の売り上げ減少に歯止めがかからず、赤字を垂れ流すような不採算店舗が増えれば、規模縮小も十分あり得る。どこの業界もそうだが、わが世の春はいつまでも続かない。誰もが認める業界のガリバーも、いよいよふつうのハンバーガーチェーンになっていく可能性は否定できない」
１９７１年７月２０日、東京の銀座三越店内に第１号店がオープンして４３年。ハンバーガー界も大きな転換期を迎えているとみて間違いなさそうだ。
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