子供に大人気の「妖怪ウォッチ」って何?
我が井戸端新聞には、個性豊かな記者たちがいる。本日登場する小林記者は熱血漢で男前、吉川記者は米国留学を経験した才色兼備の女記者だ。二人は同じ高校の同級生で、付き合いはかれこれ30年になる。その二人が最近、超人気というあるおもちゃについて語り合った。
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小林 よしかわクン! いやあ、こう暑くっちゃたまらん。海でも行って「バカヤロー」って叫びたくなるよ。
吉川 何言ってんのよ。あなたのセリフのほうがよっぽど暑苦しいわ。いつまでも青春やってる齢でもないでしょう。
小林 青春かぁ。そういやキミのバトンさばきはよかったなあ。白いミニスカートからのぞく太ももはたまらんかった…。
吉川 ホント、ここの男たちって、セクハラばっか。いい加減、怒るわよ。ウーマンリブを敵に回したら、大変よ。わかってんの!
小林 相変わらず厳しいなぁ。
吉川 それより知ってる? アツイといえば、今、子供に熱い視線を浴びている妖怪…
小林 おお、妖怪と言えば、水木しげるのあれだろ? ゲゲゲの鬼太郎。
吉川 いつの話をしてんの。
小林 ああ、あれだ。ごちそうさんのヒロインの…、あれ、何だっけ?
吉川 ハイ、ハイ、ハイ。あなたの言いたいのは渡辺謙の娘の杏ね。妖怪人間ベムのベラ役ね。だ・か・ら、もう、小林君っていっつもせっかちなんだから。いい? 最後まで人の話を聞いてよね。妖怪ウォッチよ、妖怪ウォッチ。
小林 何だそれ? たまごっちの新種か?
吉川 いま子供たちに大人気なのよ。去年の7月に発売されたニンテンドー3DS専用のゲームソフトのタイトルで、今年の1月にテレビ東京系でアニメも放送開始になって、一気に人気に火がついたのよ。
小林 で、何で人気なのかね。
吉川 何でも小学5年生のケータって主人公が、ウィスパーって妖怪と出合い、その妖怪から腕時計型のアイテムを渡されるの。これが妖怪ウォッチね。
小林 なんかベタだなあ。
吉川 まあ聞いて。その妖怪ウォッチを使うと街に潜む様々な妖怪と出合えて、友だちになり、その妖怪たちの力を借りて人間たちの悩み事などを解決していくって物語のようよ。友だちになった妖怪は、その妖怪が描かれたメダル(妖怪メダル)を妖怪ウォッチに差し込むと、その妖怪を呼び出すことができるんだって。
小林 ふーん。ポケモンの二番煎じって感じもしないでもない…。
吉川 ゲームソフトは第一弾が累計で100万本以上出荷され、第二弾が7月10日に発売されたばかりなのに、もう200万本も売れたんですって。
小林 1ヵ月も経っていないのに200万本ねえ。ゲームソフトと音楽CDの違いはあるけど、AKB48を軽く超えてるってわけだ。
吉川 それだけじゃないのよ。アニメの平均視聴率は全世帯で5%超、小学生だけの家庭に限れば20%を超えているというの。20%超えで大騒ぎしているキムタクのドラマ「HERO」(フジテレビ系)も顔負けってわけよ。それにTシャツやフィギュア、虫除けシールに箸やパン…、関連グッズもいろいろ発売されていて、中でも、とんでもないのがバンダイから発売されている妖怪ウォッチそのもの。
小林 そういえば俺ら子供のころ、仮面ライダーベルトって発売されてたっけ。ベルトの風車の部分が回転してさ。でも欲しくても買ってもらえなかった子が多かったから、そんなにはやらなかった。
吉川 ゲームやアニメ同様、妖怪メダルってのがあって、これを妖怪ウォッチ本体にセットすると妖怪の声が流れてきて自己紹介するの。本体以上にこのメダルも人気があって、これまで全3弾まで発売されていているのよ。1パック(194円=税込み)に2枚のメダルが入っていて、それぞれ30種類のメダルがあり、ノーマルなメダルと特別なメダルがあるのよ。
小林 もしかして特別なメダルほど、枚数が少ないって寸法? 俺らよりちょっとあとの世代が昔、夢中になってたビックリマンシールってあったっけ。特別なシールがほしくて、チョコレート買いまくったってやつ。
吉川 そうそう。それと似ていて、30種類のメダルを全部揃えることをコンプリートっていうらしいんだけど、コンプリートしたくって、子供たちは小遣いはたいて、お目当てのコインが出るまで買いまくるのよ。もともとの価格は1枚100円もしないのに、ネットでは1枚数千円で取引されたり、中には友だちから盗む子もいて問題になっているのよ。それに、見たでしょ。8月2日、朝から家電量販店はどこもかしこも大行列。
小林 そう言えばアキバのヨドバシカメラ、凄かったよ。エッ、それが何か?
吉川 小林君、あんたも記者やってんなら、少しは興味持ちなさいよ。あの日、妖怪ウォッチの第二弾「DX妖怪ウォッチタイプ零式」(3456円=税込)が発売された日なのよ。
小林 何だって? それであんなに並んでたのか。でも子供っていうより、大人が目立ってたぞ。
吉川 実は、そこが問題なのよ。需要が出荷数を大きく上回り、先着順で販売した店舗は、前日の1日から並んだ人で販売終了ってところもあったし、量販店の多くは抽選販売をしたの。倍率は10倍、20倍を超えたところもあったのよ。
小林 そりゃ凄いや。
吉川 ところが、発売当日、ネット市場を覗けばアマゾンや楽天で定価の3倍、4倍、中には5倍超の2万円以上の値段で売られていたのよ。
小林 そうか。長蛇の列は、利ざやを稼ぐ大人たちの仕業ってわけか。
吉川 もちろん純粋に欲しくて並んだ子供たちや、子供にプレゼントしようとあの暑い中並んで手に入れられなかったパパやママ、おじいちゃん、おばあちゃんがいたのも事実。ただダフ屋まがいの悪人も相当いたのは確かよ。
小林 そりゃあ、発売元も悪いな。
吉川 そう。聞いてよ。新型の妖怪ウォッチの発売の前に、この新型専用の妖怪メダル(1パック2枚入り194円=税込み)が発売されたんだけど、旧妖怪ウォッチと互換性がないの。旧メダルも新型の妖怪ウォッチでは使えないんですって。物語上、仕方ないらしいんだけど、子供のおもちゃで大人がカネ儲けしているようでイヤよねえ。
小林 よしかわクン! だから人間、いつまでも青春が大切だって言ってんだろ。おもちゃなんかに振り回されちゃいかんのだよ。子供は泥んこになって外で遊ぶ。近くに砂浜があれば、夕陽に向かってバカヤローと叫ぶ。時に涙を流し、さらば涙といおう…なんてね。
吉川 ………
(注=登場する記者には多少の脚色があることをご了承ください)
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