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時価総額600兆円突破のまやかし

2015年6月2日(火)12時44分更新

 週明け1日の日経平均株価は先週末より6円72銭高い2万569円87銭で取引を終え、12日連続で終値が年初来高値を更新した。景気のいい話が続くなか、さらに東証1部の時価総額が遂に600兆円の大台を突破、601兆5859億円となり、報道各社が伝える経済関連ニュースでは「バブル経済絶頂期もなし得なかった600兆円超え」などとはやし立てていた。

◇上場企業数がそもそも違う

 ちなみに平均株価(終値ベース=以下同)の史上最高値記録は1989年12月29日の3万8915円87銭、これは今も破られることない金字塔だが、同時にその日に記録した590兆9087億円が、20年以上にわたり東証1部上場企業の時価総額記録だった。ところが先月22日にその時価総額を突破(591兆3007億円)、株価連騰を受けて、この日の600兆円突破につながった。「ただ」というのはある証券関係者。

東証1部で時価総額がバブル期を抜いたとはしゃいでいるが…

東証1部で時価総額がバブル期を抜いたとはしゃいでいるが…

「600兆円という数字だけ見るととてつもなく凄い数字に思えるが、別に騒ぐような数字ではない。株式の時価総額は、上場企業が発行する株式に、株価を単純に掛けて弾き出した数字にすぎない。そもそも東証1部の上場企業数が、今に比べてかなり少なかったバブル絶頂期と比べること自体、無理があるしナンセンス」

 バブル絶頂期に、東証1部に上場していた企業数は1160社ほど。現在はそれより700社以上も多い1890社に膨れ上がっている。当然、時価総額も700社分多くなってしかるべきなのだ。「恐らく時価総額でいえば、1000兆円、いや1500兆円くらいになってはじめてバブル期に肩を並べるといった数字になるのでは。まあ我々証券界の住人にとっては、理由はどうあれ景気のいい話はウエルカム。無いよりは有ったほうがましというレベルの話」(前出の証券関係者)。

◇現在の株価は実体経済を反映していない

 それでも連日株価が上昇するということは、下落するよりはいい話に違いない。何より、日本経済が回復に向かっている明るい材料ではあるまいか。そう思いたいが、実態はそうでもない。本サイトでも何度か警鐘を鳴らしているが、株価が好調な要因としてよく言われているのが、年金をはじめとした公的資金や日銀が株を買い支え。さらにその尻馬に乗り、外資の買いが大量に入っているからというものだ。別に企業の業績に期待して株が買われているわけではないのだ。さらに株価上昇とリンクする形で円安が進み、この日の東京外国為替市場は、一時12年半ぶりの安値となる124円34銭となり、125円台も見えてきた。

「庶民の間に景況感が改善されないのも、まさにそこにある。日本は輸入依存度が高く、円安が進めばそれだけ原材料の調達コストはかさみ、商品も高額になる。当然、消費者のフトコロも直撃する。その一方で株高で庶民が潤えばいいが、株式投資をしている庶民の絶対数は少ない。それに仮に持っていたとしても数十万、数百万円程度では、配当はもちろん、売却益だってたかが知れていて最近の物価高に追いつけない」というのは本サイトでも度々お世話になる金融ジャーナリストA氏だ。

 結局、株価上昇で喜ぶのは機関投資家と外資ばかり。それに本人名義はそこそこ抑えて、家族名義などを駆使して大量に金融資産を持つ政治家ばかり。「平均株価が連日上昇」だとか、「時価総額の記録更新」などとはしゃいだところで、庶民にはそんなに関係のないお話。「決して実体経済を反映しているとは思えない株価は、いつ何時、どこかで馬脚を現して急落する可能性もある。クワバラクワバラ…」(A氏)という話もある。株式市場で景気のいい話が出た時は話半分、いや目は閉じ、耳は塞いで聞いた方がいい話なのは間違いなさそうだ。


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