連載コラム『クレーマー天狗』第10回~アブナミクス
アラカン(還暦)ならぬアラサン(傘寿)世代の本サイトご隠居顧問が、あらゆる話題に斬り込む『クレーマー天狗』。今回は、師走に突然の総選挙を実施し、圧勝した安倍政権の〝たくらみ〟を嘆き、そして「ついに高齢者のフトコロに手を付け始めたゾ!」と警鐘を鳴らした。
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「デフレという負のスパイラルからの脱出」を安倍内閣が言い出した時、イヤな予感がしたのだが、それがどうやら的中したようだ。デフレの反対は言わずと知れたインフレ。インフレといえば終戦直後の悪夢が甦る。物価が毎日のように上がり、きのう10円で買えたものが、今きょうは15円、あすは20円という具合に物の値段がアレヨ、アレヨという間に上がっていく。これで最も被害を受けたのは?
言うまでもなく、インフレの急流に押し流された〝社会的な弱者〟だ。次の給料が出る頃には受け取る給料の価値が半分になっているかもしれない月給取りをはじめ、働くに働けない高齢者、親のいない戦災孤児、子供を抱えた戦争未亡人などなど。食うものも食わず、着るものも着ないで「お国のため」にと買わされた国債は紙くずとなり、大事に備えて蓄えたヘソクリも痩せほそった焼き芋たった一本。
配給ものといえば、北海道では腐るほど獲れたスケソウダラはまだいいほうで、アンモニア臭の強いサメ肉、家畜もそっぽを向きそうな苦味のある古いトウモロコシの粉。こんな時代を覚えている人が少なくなっているし、当時、東京など戦災を被った都会に住んでいなかった人にも理解しにくいだろう。敗戦ですべてを失った国の都市部に住んでいた人たちの二度と見たくない悪夢だった。
そんな悪夢を知らない、そして、たとえそうなったとしても一向に困らない安倍さんが、一歩間違えば悪夢の再来ともなるインフレに向かって舵を取り始めたのだ。悪いことに黒田日銀総裁とともに、日本中から拍手を受けて…。しかも、12月の〝大義なき解散と選挙〟で、衆議院の3分の2を超える自民党の圧勝だったから、これからは通したい法案は何でも通せるようになった。消費税を10%にするのは、とりあえず1年半先送りされたものの、取り下げられたわけではないから、そんなものはすぐにやってくる。加えてインフレ傾向とくれば、低所得者から苦しくなるのは火を見るより明らかだ。しかし、いくら安倍内閣が非情でも、国民を痛めつけ過ぎれば自分に跳ね返ってくるのはご承知だから、サラリーマンへの救済措置は出してくるだろう。
インフレの真の狙いは、政府が抱える総額1000兆円を超える借金の軽減だ。例えば、Aさんが Bさんから5年後の返済契約で200万円を借りたとする。その5年間に物価が2倍になっていれば、Aさんの借金は実質的に半分に軽減されたことになる(利息は別)。これを政府に置き換えれば、5年先、10年先の国債返還が、物価上昇分だけ楽になる計算だ。
年金だって、とくに何にも触らずに、物価上昇分だけ減らせることになる。もちろん、年金生活者はその分、生活費を削って生きていかなければならなくなる。毎晩の晩酌などもってのほか、おかずも2品へらしたりと、官製のダイエットを強いられる。そのうち、孫のために…と貯めてきた僅かな預貯金まで取り崩して、生活費に充当させられるぞ。
ところで、そこのあなた! あなたはそこまで考えて投票したのか。また、棄権した諸君! もう、君の暮らしがどうなっても文句を言うなよ。 (次回をお楽しみに)
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