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連載コラム『クレーマー天狗』第8回~老後の夢が…~

2014年10月27日(月)11時25分更新

 アラカン(還暦)ならぬアラサン(傘寿)世代の本サイトご隠居顧問が、あらゆる話題に斬り込む『クレーマー天狗』。今回、ご隠居のターゲットになったのは、このところ連日話題をさらっているタイでの邦人殺人事件だ。被害者がご隠居と同世代、それも悠々自適の第二の人生を送っているさなかでの痛ましい事件だった。「〝ほほ笑みの国〟で起きた顔が引きつる事件」に、ご隠居は30年ほど前のことを思い出していた。

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海外移住(ロングステイ)はデメリットも潜むことをお忘れなく(写真は本文とは直接関係ありません)

海外移住(ロングステイ)はデメリットも潜むことをお忘れなく(写真は本文とは直接関係ありません)

 79歳といえば筆者の一つ上か、あるいは同い年か。それだけに身につまされるむごい殺人事件が「老後の天国」と言われる南国タイで起こった。タイ・バンコク在住で愛知県出身の島戸義則さん(79)が、知人の女ポンチャノック・チャイヤパ(47)とタクシー運転手で内縁の夫のソムチャイ・ケオバンヤン(47)両容疑者に殺害され、遺体を切断された上捨てられたという悲惨な事件だ。タイ警察の調べが進むうちに、11年前に事故で死亡したとされていた50代(当時)の日本人男性も、実はこの2人による保険金狙いの殺人だったことも判明した。おもてなしの国の男2人がほほえみの国で殺されるとは……。

◇思い描く夢の第二の人生

 身寄りの少ない年金暮らしの独身老人にとって、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナムなど、比較的あたたかくて治安もよく、物価が安い国への移住は一種〝バラ色の夢〟だ。まぁ、ざっくり言えば、年金が月額20万円台と貯えがン百万もあれば結構な住宅に住み、料理、洗濯をしてくれるお手伝いさんの世話を受けながら、趣味の世界で楽しく人生を全うできるとあって、誰もが描く第二の人生だ。

 このところの低金利で海外生活の夢の大きさも半分以下にしぼんではいるが、今から30年ほど前かな? 当時、スリランカでは日本のお年寄りにこんな夢のような定年後の設計図を示して「長期滞在者」を募っていたことがあった。いわく「供託金1300万円をスリランカ国立銀行にお預けいただきますと、我が国の定期預金の金利が10~12%(当時)ありますので、年間130~156万円の利息がつきます。年にそれだけの収入があれば、我が国では①ご夫婦で5LDK以上の庭付き、プール付きの住宅に住み②掃除、洗濯、料理をそれぞれ担当するお手伝いさん3人と、車があれば男の運転手の計4人が月4万円(年間48万円)で雇えた上③さらに趣味や外食、その他いろいろな楽しみがあなたをお待ちしています。④遊びながらこれだけの贅沢をされても、銀行でお預かりしている元金を1円も減らすことはなく、むしろ使いきれないお利息が残ります(ただし、この利息分はご帰国の際に国外に持ち出すことはできません。スリランカ滞在中に使いきってください)。これに心を動かされない人は少ないだろう。

◇メリットよりデメリットを考えよ

 スリランカ側のメリットももちろん多い。外貨の中でも力の強い『¥』が政府としてキープできるし、滞在中は収入のある仕事に付けないので質の高いボランティア活動が期待できる。また、スリランカ国内の雇用促進のほかに、少ないながらも国内消費が増える。お互い、いい事ずくめのアイデアだった。周りにも実際に行った人、半分以上行きかけた人が何人かいた。だが、その後間もなく内乱がおき、金利が下がり……行った人は夢破れて帰国し、「メリットよりリスクを先に考えよ」と大先輩に忠告されて断念した人は胸をなでおろしと、明暗はくっきりと分かれた。

 タイでの事件は明らかに「財産狙い」「保険金狙い」であった。いかにも人のよさそうな日本人被害者と、それを狙う容疑者達の鋭い邪悪な目つき。日本という平和な国で老後を迎えた人たちには、あの犯人の顔でさえ、天使のように見えるのだろうか。日本の老人たちよ、甘くて大きすぎる夢は捨てよ! 老人の楽園と天使はあり得ない! と自戒を込めて…!

(本サイトご隠居顧問=当コラムは毎週月曜、木曜の週2回掲載=都合により休載の場合もありますのでご了承ください)


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