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連載コラム『クレーマー天狗』第5回~警官も人間だ~

2014年10月16日(木)08時56分更新

 アラカン(還暦)ならぬアラサン(傘寿)世代の本サイトご隠居顧問が、あらゆる話題に斬り込む『クレーマー天狗』。今回、ご隠居がターゲットにしたのは前回に続き、世界に冠たる安全大国を演出する日本の警察だ。事件は未然に防いでこそ安全神話の真骨頂! なのに最近の事件を見ていると、どうも釈然としない。警察が大変な仕事なのは百も承知! でももっと早くに対応できていれば、被害者を出さずに済んでいたのに…そんな事件が多すぎる。ご隠居の怒りは頂点に達した。

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おまわりさん、ガンバって事件解決してね(右手前が警視庁庁舎、奥が警察庁が入居する合同庁舎)

おまわりさん、ガンバって事件解決してね(右手前が警視庁庁舎、奥が警察庁が入居する合同庁舎)

◇おまわりさんも人の子?

 警察官のあいだで語られるひとつ話がある。「早朝出勤の際に川でおぼれた死者を見つけたとしようか。その川のまん中が自分のA署ととなりのB署の境界線だったら、その位置がA署の管轄でないことを確かめてからB署に通報するのが常識です。えっ? もし自分の署の管内だったらどうするかって? もちろん、どんな手を使ってでもB署管内の向こう岸に押し付けるさ」

 天狗のおじさんが若いころ、親しくしていた現職の警部補どのから聞いたブラックジョークだ。でも、あながちまるっきりの冗談と片付けられないフシもないではない。根拠はいくつかある。第一にこれが事件であれ事故であれ、ほんの少しの手間で自分の仕事を減らせること。ホトケを引き揚げて署まで運び、身元を調べ、自殺か他殺かを調査したうえで調書を作成し……おまけに事件性がないと分かると、事故を処理したというだけで所轄署の実績(ポイント)にはならない。文字通り〝骨折り損のくたびれ儲け〟に終わってしまう。第二に、たとえ事件性があって署の実績につながったとしても、それはそれで忙しさが増えることになる。貰う給料は同じなのに、この事件処理のおかげで楽しみにしていた公休を返上することになったら同僚からも恨まれる。おまわりさんも人の子、公務員の一員なのだ。

◇民事不介入が被害拡大に拍車

 このところ、ニュースの常連になったのが実の親による子供の虐待や育児放棄と、それが原因となった死亡、殺人事件。そのつど、担当区域の児童相談所のハンで押したようなコメントがでる。「不審な点があったので何回か訪ねてはいたのですが、そのつど保護者が出てきて異常がないというので、安心していたのですが…」。なんとなく怪しいと思っても、それを押しのけてまで敷居をまたぐ権限はない、つまり、保護者ともめてまで調査を進める〝義務〟はないということになる。自分に面倒や危険が及ぶなんてことは誰だってしたくはないよね。これを警察用語でいうと「民事に介入せず」となる。

 当然のことなのだが、例えばストーカー事案となると一市民として複雑な気持ちになる。被害者はほぼ100%女性だが、この気の毒な女性たちは夜もオチオチ眠れないし、通勤・通学も怖くてできない。そこでワラにもすがる思いで警察に訴え出る。が、これを受けた担当の刑事さんは〝民事不介入〟をタテに話だけ聞いてお帰り頂くしかなかない。この時の相談者の絶望感はいかばかりだったか。

 平成11年の『桶川ストーカー殺人事件』をきっかけに翌12年に『ストーカー規制法』が成立したものの、この後も21年の『新橋耳かきサロン事件』、24年の『逗子デザイナー刺殺事件』、25 年の『東京・三鷹高3女子刺殺事件』、そして今年5月の『大阪・平野区スナック女店員殺人事件』と、大きな事件が絶えない。これらの事件の中には担当刑事が加害者に警告を発して火に油を注ぐ結果になったり、せっかくDVの加害者に知られずに転居したのに、行政機関がウッカリ新住所を加害者に教えてしまったり…。

 事件が起きなければいくら危険が予想されてもストーカー男を逮捕できないなら、被害者が留置場で保護してもらうしかないぞ。

(本サイトご隠居顧問=当コラムは毎週月曜、木曜の週2回掲載=都合により休載の場合もありますのでご了承ください)

 


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