新連載『テレビって奴は』第1回~画面の○○な様子が見てとれます~
あと○年と●ヵ月で傘寿を迎える本サイトご隠居顧問が物申す! アナウンサーや司会者、言葉のプロたちが日々繰り広げる(繰り返す)誤用の数々、笑って済ませていいはずはない。顧問曰く「テレビはわれら年寄りの最大の親友。だからこそのお節介な忠告です」と。ご隠居顧問の不定期連載『テレビって奴は』、第1回は「画面から○○な様子が見てとれます」って、そんな誤用あっていいんかい。
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台風だ、集中豪雨だ、やれ地震だ、津波だと、大災害のつど現場に駆り出されるのがリポーター諸君。ヘルメットにゴム長姿でマイクを持ち、時には命がけの(まさか?!)報道姿勢にあたまが下がります。彼らが各局の正社員か契約社員かはわれら視聴者にはカンケ―ない。いずれにせよ、一流大学を出てから各局の厳しい試験を受けて難関を突破してきた精鋭たちだろう。
◇すでに半年ほど前から蔓延
そんな優秀な人たちが無学で時代遅れな年寄りに指摘されるような「誤用」をするはずがない…と思うのは間違いだった。某局の某君は勢いよくなんの迷いもなくこう言ったね。
「画面をご覧ください。画面上方に悪魔のつめ跡のような土砂崩れが何か所もあるのが見てとれます」と。
これが彼だけの話なら目をつぶってやるのが人情ってもんだが、実はこれが初めてじゃァない。それどころか、すでに半年ほど前からまるで流行語のように各局のリポーター諸君の間に蔓延していて、いろいろな事件・事故現場からこの言葉が聞こえてくるのだ。一介の老人がとっくに気が付いているのに、テレビ各局のお偉いさん達は気が付いていないのだろうか。
えっ? どこがおかしいのかって? まいったなぁ、そこの人!
◇テレビ局のチェック機能に問題
いいですか、現状や画面を目で見て分かることを「見てとれる」とは言わないでしょう。本来の使い方は例えば「会談を終えて出てきた石破氏の表情から、総理の入閣要請を受け入れたことが見てとれます」……本人は無言だが、いつものムッツリ顔がほころびている所から、明らかに読み取れるなんて表現に使われることばです。
嘘だと思ったら、辞書を引いてみてね。それはともかく、すさまじい現場に圧倒されて平常心を失っているリポーター諸君を批判するよりも、ここまでこの言葉を野放しにしてきたテレビ局のチェック機能が問題だ。
話はちょっと前にさかのぼるが、れっきとしたアナウンサー(もちろん正社員)のかつての「誤用」に「御用」してみよう。 (本サイトご隠居顧問=次回をお楽しみに)
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