集中連載『テレビって奴は』第27回~評論家の評論家~
あと○年と●ヵ月で傘寿を迎える本サイトご隠居顧問が物申す! いつも「テレビはわれら年寄りの最大の親友。だからこそのお節介な忠告です」というご隠居が、数多いる評論家を品定め。ご隠居顧問の小噺連載『テレビって奴は』の第27回は「『評論家』の評論家」、早速いってみよう。
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おいらがこよなく愛するテレビ君は、つねに新しいユニークな評論家を産み出してくれる。このところ、放送席の野球評論家やボクシング評論家、その他スポーツの種目ごとに何人もいらっしゃる評論家諸氏には食傷ぎみ。だもんで、新種の評論家が誕生するとそのたびに嬉しくなったもんだ。特においらが尊敬してやまないのがラーメン評論家だ。ある高名なラーメン評論家は、番組担当のアナウンサーから「これまで、どのくらいのラーメンを食べましたか?」という質問に胸を張ってこう答えている。「正確な数は分かりませんが、年間では300~400食は食べているでしょうね」
◇ラーメン評論家は命がけ!?
おいら、これを聞いただけで吐き気を催すほどの畏敬の念を覚えたね。考えてもごらんなさい。毎日一食、日によってはニ食から三食もラーメンを食べ歩いている計算になるんだぜ。「ラーメンにはいろんな種類があるから、飽きは来ないと思うよ」なんていうラーメン好きな若者がいたが、お前さんなら一週間ともたないだろうよ。おいらがラーメン評論家を尊敬する理由は大きく三つある。
①彼らはこの道に命をかけている。この一点だけでも、安全な場所にいて自分の専門分野での見解や批評をするだけの評論家諸氏はおととい来いだ。ご存じのとおり、ラーメンは高カロリー食の代表選手。味を良くするための牛や豚の脂、とくに最後に加える豚の背脂がギタギタ浮いたスープは、医者が目をそむけるようなシロモノだ。また、めん類全般に言えることだが、スープの塩分が問題。めん自体に塩分が入っている上に、味を引き締めるためにスープも少しカラ目に作られている。これを毎日食べるのだから、高血圧,高脂血症などの成人病は覚悟の上。まさに命がけなのだ。
②ラーメンの調味料は醤油、味噌、塩の3種類が基本。だしは店やシェフによって牛骨、豚骨、鳥骨とそれぞれの骨髄や脂、モツ、それに魚介系などを巧みに使い分ける。また熱い、冷たいのほか、つけ麺、ざる麺、油麺、激辛麺などのバリエーションがあり、だしの配合や麺の打ち方などのほとんどが企業秘密になっている。しかし、そこにいくら日本一とか世界一とかのうまさがあるとはいえ、雨の日も風の日も、毎日1食は食べ続ける意思の強さと、全く飽きがこない味覚の鋭敏さはまさに「鉄の意思」「鉄の舌」の持ち主と言わざるを得ない。
③ラーメンを食べるにはカネが要る。一杯1000円前後としても毎月3万円プラス交通費&宿泊費がかかる。評論家活動をより有利にするためには、調査地域は広いほどよい。北は北海道から南は沖縄・宮古島まで。暑さ、寒さもなんのその、食べ歩き、泊まり歩きで一体いくらかかるのか。そしてその金は評論活動だけで賄えるのか、心配で心配で、おいら、ラーメンも喉を通らないのだ。
「ラーメン評論家なら誰でもなれる」なんて言う奴は、健康診断と家計診断を済ませたうえでラーメンのたべ歩きから始めて貰おうか。元が取れるかどうかは保証しないけどね。ああ、それにしても欲しいのはどの評論家がいい評論家かを評論してくれる「評論家評論家」と、おいら達年寄りがこれからどう生きたらよいかを教えてくれる「終活評論家」だよな。 (本サイトご隠居顧問=次回もお楽しみに)
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