集中連載『テレビって奴は』第7回~「朝のこない夜はない」けど「秋(飽き)の来ない笑いもない」~
7日、22年間続いた長寿バラエティー番組が終わりを告げた。傘寿まであと○年と●ヵ月の本サイトご隠居顧問も、感慨深い思いで最後を見送ったという。感無量だからこそのご託宣、「テレビはわれら年寄りの最大の親友。だからこそのお節介な忠告です」と。ご隠居顧問の小噺連載『テレビって奴は』の第7回は、去りゆくMCに愛情を込めて「『朝のこない夜はない』けど『秋(飽き)の来ない笑いもない』」とエールを送った。
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もう20数年ほど昔になるが、脂が乗り切ったさんまの面白さは「今が旬」とばかり、当時は群を抜いていたっけ。おいらの頼りない記憶によれば、その頃のお笑い三羽ガラス「たけし」「タモリ」「さんま」の3人のうち、たけしは『オレたちひょうきん族』が終了して一服、タモリは『笑っていいとも』だけで手一杯。そのお二人のそのすきを突いて抜けだしたのが明石家さんまだった。
◇株だって売る時が難しい
つい先日まで『オレたちひょうきん族』の客人だったさんまが冠番組を次々と手に入れ、まさにわが世の春ならぬ〝さんまの秋〟を謳歌し始めた。そのさんまの快進撃のきっかけとなった『からくりTV』がきのう7日で幕を閉じるとはねぇ。いやぁ、TBSはよく思いきったと褒めておきたい。テレビの番組でも新聞、雑誌の連載にしても、始めるときはお互いにニコニコ顔で「よろしく」「いや、こちらこそ」でシャンシャンシャンてな具合に進むのだが、終わる時はニコニコ笑いながらというわけにはいかないから大変なのだ。
株だって買う時より売る時の方が難しい。売り時を誤ったばっかりに持ち家を売ったり、破産したなんて話はいくらでもある。寝耳に水のように打ち切りを聞いた本人はかなりショックだったようだが、かねてから「さんまは今が潮時」とうちのばあさんに告げていたおいらは、別に驚かなかったね。むしろ、コント55号の解散のほうがずっとずっとさみしく、悲しかったな。
抱腹絶倒、腹の皮をよじって死ぬかと思うくらい笑わせてくれたのはこのコンビと、雲の上団五郎一座の二つだけ。後者は50年以上前に『紅白』の裏番組のため一回だけ結成されたお笑い集団で、笑うのが苦しくて、途中で何回かスイッチを切ったほどだった。そして、コント55号は笑わせすぎたため行き詰まるのも早かったし、団五郎一座はその後二度とテレビの画面には出なかった。
笑いというのは、その度合いが激しいほど飽きるのも早く、演者もお客もさらなる笑いを求めてお互いに行き詰まるってぇのが定石だそうだ。
◇明石家さんまの名を大切に
この50~60年の間に何組のコンビやトリオ、カルテットなどを見送ってきたことか。中には思わぬ悲劇的な終わり方をした人もいるが、これが「笑いの求道者」の宿命なんだろうね。さて、さんまさん! これでガックリしないで、今は引退同然のライバル・島田紳助にはない笑いを提供し続けてほしい。あなたはもう十分に道を究め、財も成した。これ以上、何を望むのか。
億万長者になったお笑い芸人が貧乏な観客よりへりくだって笑わせるなんて、シャレにもならないし、そんなばかばかしいこと出来っこないよね。これからは残る冠番組をいつ、どのような形で各テレビ局にお返しするか。くれぐれも最後まで番組にかじりついたまま老醜、老残をさらして、明石家さんまの名をおとしめないように。それに、番組作りなら所ジョージがいま異彩を放っています。お笑いの人たちには絶対気がつかない住宅のリフォームや、地味な日本の職人さんを紹介する番組はなかなかのもので、お笑い番組よりずっと面白いのだよ。 (本サイトご隠居顧問=次回もお楽しみに)
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