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March , 2024
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2014春闘、景気のいいベア回答に落とし穴!?

2014年3月13日(木)02時56分更新

 

景気がいいという割には人通りがさみしい街並み(東京・銀座で)

景気がいいという割には人通りがさみしい街並み(東京・銀座で)

 12日は2014年春闘、主要企業の集中回答日だった。自動車各社、電機大手…多くの企業で景気のいいベア回答が続出。労働組合は勝利宣言し、政府は企業の大盤振る舞いをほめたたえた。でも待てよ。日本ってそんなに景気がよかったっけ? 政府の圧力に屈したか、はたまたアベノミクスに恩を売るつもりかどうかは知らないが、賃上げが結果的に企業の、ひいては従業員たちのクビを締めることにならなければいいが…。 ――――――◇―――――◇―――――◇―――――◇―――――◇―――――◇――――――

 日産自動車が満額回答の3500円! トヨタは、満額とはいかなかったものの、それでも2700円の回答(要求は4000円)は21世紀に入って最高のベアとなった。日立やパナソニックなど電機大手10社も2000円の統一回答をし、6年ぶりのベアを実現させた。何とも景気のいい回答のオンパレードではあるまいか。

◇中小企業は寝耳に水

 ベアを勝ち取った労組サイドは、どこもかしこもしてやったりのえびす顔。経団連の米倉会長などは「こういった(2700円のベア回答といった)形で従業員に業績を還元し、報いているということは経済人として非常にうれしい」とトヨタの回答を手放しで評価するリップサービスも行った。本来、賃上げ交渉で対立しがちな労使間の関係性を考えれば、この仲良しこよしぶりは少しばかり気味が悪い。 景気がよくなっているのはアベノミクス効果などと政府は喧伝するが、そもそもこのアベノミクスが食わせものなのだ。為替市場や株式市場に仕掛けたマネーゲームが功を奏しているだけで、決して実体経済が伴っているものではない。

 何より今回のベア回答は、日本経済全体を反映したものかといわれれば、全体の7割を占める中小企業を見るとそうではない。東京都内のある町工場の社長は「随分と景気のいいベア回答が出たようですけど、あくまでも日本を代表する一部の大企業の話でしょ。我々零細にはピンとこない」という。他にも「原材料費が15%以上もアップしているうえに、4月から消費税アップ。これで従業員の給料上げたら、会社はパンクですよ」と嘆息する経営者もいる。

 11日の閣議後の記者会見で甘利経財相が「利益が上がっても何もしない(賃上げしない)企業は経産省から何らかの対応がある」と発言したことに関し、「まあ従業員5人しかいない、うちのような小さなところには関係ない話」と前置きしながら横浜市内で輸入雑貨を扱う会社の経営者はこう憤る。

「これって国が企業に『ベアがないとどうなるかわかってんだろうな』ってヤクザまがいの脅しをかけているのと一緒でしょ。こんな強引なやり方して、それで『ハイ皆さんの月給上がりましたよ。アベノミクスのお陰ですよ』って言われても、そんなのまやかしでしかない」

◇ない袖は振るべからず

 確かに昨年からこの3月にかけて、消費増税前の駆け込み需要で、とくに大型消費財を中心に需要は喚起された。一時的に商品もカネも回っていた。しかしそれも今月末まで。4月に入った途端、買い控えが一気にやってくる。 「結局、月額2000~3000円程度のベアでは消費増税分で消えてしまうため、景気を浮揚させるどころか、下支えにさえならない」(経済アナリスト)。

 もちろん「ベアはないよりあったほうがまし」「給料は高いに越したことはない」と思われるが、果たしてそうか。

 都内で約200人の従業員を抱えるある印刷会社は東日本大震災以降の業績不振で、ベアはもちろん一時金、いわゆる夏冬のボーナスともストップしたままだ。従業員の一人は「そりゃあ、つらいですよ。住宅ローンを払えずに家を手放した仲間もいますしね」というので、続々発表される景気のいいベア回答の話をふると、意外にもサバサバとした表情でこう語った。 「無理にベアだ、ボーナスだと要求して、それで会社が潰れたら元も子もありませんからね。今は少しでも会社の業績が上向くよう自分の仕事をするだけですよ」

 必要以上に内部留保に努め、社員に還元しない企業は批判されるべきだろうが、ない袖を振ってベアだボーナスだと社員に還元した挙げ句、倒産するような企業も考えもの。果たして、今回の景気のいいベア回答が、後々、禍根を残すような結果にならぬことを祈るばかりだ。  


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