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October , 2024
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丸山夏鈴さん死去で思うアイドル考

2015年5月24日(日)04時48分更新

 一人のアイドルが亡くなった。享年21。夢の途中で彼女は逝った。生きたかったろう、悔しかったろう…想像はできても彼女の気持ちはもう、誰も汲み取ることはできない。持つ者と持たざる者、その格差も芸能界の厳しさとするならば、志半ばでこの世を去った持たざる者への鎮魂の意は、持つ者ほどより強く持つべきではなかろうか。命を削って夢を追ったアイドルの心ほど、純粋なものはない。

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 22日に一人の女性アイドルがこの世を去った。丸山夏鈴(かりん)さん、わずか21年10カ月の人生だった。

◇何度も乗り越えた手術だったが…

 福島・郡山市に生まれた彼女に脳腫瘍が見つかったのは小学2年生の時。手術をし、入院している最中に、アイドルへの夢を抱くようになったという。中学2年生と、さらに高校卒業後に立て続けに2回、合計4度にわたる手術を行った。2012年、4度目の入院中に講談社主催のオーディションに応募。退院後に選考通過したことをきっかけに、芸能事務所ハッピーストライクに所属することになり、7月には撮影会に臨み、夢の第一歩を踏み出した。芸能活動に精力的に取り組み始めた13年3月、またも病魔が彼女に襲いかかり、休業を余儀なくされた。活動休止中、2度の手術が行われ入院していた8月、彼女の誕生日に初めてのオリジナル曲「Eternal Summer」が出来上がり、退院後の9月に初めてのワンマンライブを開催。CDデビューに向け、精力的に活動を再開した。

入院中もブログを更新し続けていた夏鈴さん

入院中もブログを更新し続けていた夏鈴さん

 ところが彼女の夢はその年の年末、またも脳腫瘍の手術でとん挫する。実に7度目の手術だった。「絶対、負けない」――つねに不死鳥のごとく再起を果たす彼女だったが、いよいよ病魔は最後の段階へと舵を切り始めていた。14年9月、腫瘍の一部が肺に転移、肺がんが見つかったのだ。それでも、前を見続ける彼女の夢は、決してしぼむことはなかった。退院後、肺の機能が低下するため、それを補うための酸素吸入器の世話になりながら、4時間にわたりレコーディング。そして2月28日、遂に「Eternal Summer」でCDデビューを果たしたのだ。

 精力的にデビューイベントをこなす中、3月24日に放射線治療のために入院する。この時点ですでに病魔は確実に彼女の体を蝕んでいた。それでも自身のブログで入院中に病院の許可が出て、いちご狩りに出掛けた元気な姿をファンに向けて報告するところもあった。ところが徐々に彼女の体力は薬の副作用もあって失われていく。5月14日のブログに「なんか、寝たらこのまま死んじゃうんじゃないかって怖くなったり。みんなの前ではアイドルでいたいけど、ガチ病人からの復帰はまだまだ時間がかかりそうです。時間なんて本当はないのに」と死を覚悟したような書き込みをし、またツイッターは21日に「私は眠り足りないから寝る」と書き込んでから、それ以降自らの手で更新することはなかった。21日の動画サイトでも「薬で眠いです。じゃあさようなら。バイバイ」と最後の力をふり絞るような声でファンに報告。それが彼女からファンに向けた最後のメッセージになった。そして22日午後1時10分、夢の途中で、永遠に覚めることのない夢の中へと旅立ってしまった。

◇勘違いアイドルは自分の器の小ささを知るべき

 今年2月、日本テレビ系の報道番組「news.every」で、彼女の特集が放送された際、初詣に訪れた神社の絵馬に「この先もずっと健康で、ファンの方に笑顔を届けられますように」と書き込んでいた夏鈴さん。アイドルとして活躍する夢、それ以上に健康でいられることへの願いを書き込んでいた。

 群雄割拠のアイドルの世界、AKB48やももいろクローバーZなどを頂点に、その一方でメジャーデビューを夢見て地道な活動を続けるアイドルは数多い。生き馬の目を抜く芸能界にあって、それこそ他を出し抜いて、いや蹴落として、成功の階段を駆け上がろうとするタイプも決して少なくない。最近は、成功した途端に、10代や20歳そこそこで10万円以上もするサンダルを履いてみたり、身に着ける何十万円もするブランドバッグや洋服を、あたかも勝ち誇ったかのようにアピールするアイドルも後を絶たない。

「自分の稼いだおカネで、何に使おうが何を買おうが大きなお世話」そう言わんばかりに振る舞うアイドルたち。芸能界を見続けているある関係者はこう話す。

「中にはユニクロを着る人を、小ばかにしたような発言をするアイドルもいて物議を醸すこともある。若さゆえの失言かもしれないが、そういう彼女たちも、純粋にアイドルを夢見て頑張った時があるはずだし、その時代はユニクロなども愛用していたに違いない。野暮は言いたくはないが、やはり行き過ぎた勘違いは、時として反感を買うこともある。『自制心を持て』と言っても、今の若い子たちにはピンと来ないかもしれないが、今回の丸山さんのように、死と背中合わせという厳しい現実と向き合い、そして決して逃げ出さずに闘い続けたアイドルがいることを認識すれば、自ずと自分の器の小ささを知ることができると思う。とくに『総選挙』と呼ばれる一大イベントを間近(6月6日)に控えたAKBグループは、彼女たちの利権に群がりチヤホヤする周りの大人たちにも責任はあるが、人気のあるメンバーたちこそ、アイドルとしての自覚と自制心を身に着けてほしい」

 何がその人の幸せなのか…そんなことは他人がとやかく言うものではない。それでも丸山夏鈴さん、あなたはもっともっとファンの前で歌いたかったに違いない、話したかったに違いない。人は失うものがあってこそ、その大切な何かを知ることがある。失うものが分かっていたからこそ、命がけで夢を追い続けた夏鈴さん。あなたの努力は間違いなく開花した。これまでの闘病生活に終止符が打たれた今、安らかに休んでほしい。心からそう願うばかりだ。合掌。


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