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安保法制、与党推薦の憲法学者がノー!

2015年6月5日(金)03時22分更新

 政権与党に大きな衝撃が走った。新たな安全保障関連法案を話し合う衆院憲法審査会は4日、憲法学者を参考人として招致、各委員との質疑に臨んだ。招致されたのは早大法学学術院教授の長谷部恭男氏(自民、公明、次世代各党推薦)と慶大名誉教授で弁護士の小林節氏(民主党推薦)、早大政経学術院教授の笹田栄治氏(維新の党推薦)の3人。

◇自民、公明にとっては援軍だったハズなのに

〝事件〟は民主党の中川正春衆院議員が、こう質問したことから起こった。

「率直にここでお話聞きたいんですけども、先生方は今(審議中)の安保法制、憲法違反だと思われますか? それともその中に入っていると思われますか? 先生方が裁判官となるんだったら、どのように判断されますか」

安保法制の集団的自衛権行使に憲法学者が全員「ノー」を突きつけた

安保法制の集団的自衛権行使に憲法学者が全員「ノー」を突きつけた

 安保法制が合憲か違憲か――二者択一、まさに直球勝負の質問が浴びせられたのだ。最初に回答したのが政権与党の推薦人だった長谷部氏だった。

「安保法制というのは多岐にわたっておりますので、そのすべてにという話には中々ならないんですが、まずは集団的自衛権の行使が許されるという、その点については私は憲法違反であるというふうに考えております。従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつきませんし、法的な安定性を大きく揺るがすものであるというふうに考えております」

 憲法違反…今回の安保法制のキモとも言える集団的自衛権の行使が、何と与党の援軍であるはずの学者が違憲と明確に答えたのだ。さらに長谷部氏はこう続けた。

「それからもう一つ、外国の軍隊の武力行使との一体化に自衛隊の活動がなるのではないのか。その点に関しまして、私はその点については一体化する恐れが極めて強いというふうに考えております。従前の戦闘地域、非戦闘地域の枠組みを用いた、いわば余裕を持ったところで明確な線を引くと、その範囲内での自衛隊の活動にとどめておくべきものであるというふうに考えております」

◇言葉の遊びをやらないでほしい

 おやおや、これは自民党にとっても、また支持母体の創価学会を何とか説き伏せたはずの公明党にとっても顔面蒼白の発言だった。もちろん長谷部氏以外の2人はともに、安保法制に反対する野党サイドの推薦人。まず小林氏は「私も違憲と考えます。憲法9条に違反します」と明確に違憲と断罪したうえで、こうも付け加えた。

「後方支援という日本の特殊概念で、要するに戦場に後ろから参戦するだけの話でありまして、『前から参戦しないよ』というだけの話でありまして、そんなふざけたことでですね、言葉の遊びをやらないでほしいと本当思います」。

 もうケチョンケチョンなのだ。笹田氏ももちろん、違憲だとしてこう述べた。

「日本の内閣法制局は自民党政権とともに安保法制をずーっと作ってきてたわけです。それがガラス細工と言えなくもないですけども、本当ギリギリのところで保ってきてるんだろうな、ということを考えておりました。(中略)従来の法制局と自民党政権が作ったものがここまでだよな、と本当に強く思っていましたので、今の言葉では、定義では踏み越えてしまったということで、やはり違憲の考えで立っていると思います」

◇まるで子どもの負け惜しみ

 果たしてこれで自民党も公明党も大打撃かと思いきや、菅官房長官は「憲法解釈として法的安定性や論理的整合性が確保されているということで、したがって違憲というご指摘は当たらない」とし、今後の審議にも影響はないとした。また「違憲ではないという著名な憲法学者はたくさんいる」とも発言。全く動じていないと強調してみせた。「もちろんたった3人の憲法学者の意見で国家の将来を左右する重要な法案の道筋を決めつけてはいけない」として、本サイトでもたびたびお世話になる政治ジャーナリストのX氏はこう話す。

「今回、与党推薦の参考人となった長谷部さんは、どうも自民党が内閣法制局に一任した人選だったようだが、それでも与党の推薦人が集団的自衛権の拡大解釈を違憲と明言した事実は覆らない。それにたった3人とはいえ、憲法審査会の場で全員が違憲と断定したことの意味は、決して軽くない。菅官房長官が『違憲でないという著名な憲法学者はたくさんいる』と発言していたが、子どもがケンカで負けて、負け惜しみを言っているようにしか聞こえなかった。なんて情けない、なんて幼稚な発言なんだと思った」

 安保法制は、将来的に自衛隊員やその家族、さらには国民の命さえも奪いかねない大変重要な審議に他ならない。果たしてこのまま数の論理で法案が通っていいのか悪いのか…我々国民は腹をくくって考えるべき時にきているのではなかろうか。


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