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憲法学者が再び安倍政権を徹底批判

2015年6月16日(火)03時02分更新

 去る6月4日に開かれた衆院憲法審査会で自民党が推薦した憲法学者に、よもやの批判を受けた安保法制。それ以降、安倍政権の最重要法案とされている安保法制審議は、まるでダッチロールのような迷走をはじめている。そんな中の15日、かの〝自民党推薦の憲法学者〟で早稲田大学法学学術院教授の長谷部恭男氏と、当日同席していた〝民主党推薦の憲法学者〟で慶応大学名誉教授の小林節氏の2人が東京・日比谷の日本記者クラブで行われた記者会見に臨んだ。

◇安倍政権は橋下氏にすがるしかない?

 本サイトでも「安保法制、与党推薦の憲法学者がノー!」というタイトルで、4日に開催された衆院憲法審査会の模様を伝えた(以下参照http://idobata-press.com/news/9453.html)。野党の推薦だった小林氏、さらに早大教授の笹田栄治氏に加え、何と自民党が推薦した長谷部氏までもが「集団的自衛権は憲法違反」とする立場を明確に示し、出席した憲法学者全員が安保法制審議にノーを突きつけ、大きな波紋を呼んだのは知っての通り。

最高裁判決を持ち出した安倍政権だったが

最高裁判決を持ち出した安倍政権だったが、それも憲法学者からケチョンケチョンに否定される始末

 焦った政府与党は1959年の砂川事件の最高裁判決を持ち出すなどして「集団的自衛権行使は合憲」と火消しに躍起。ところが砂川事件の最高裁判決も、「あそこで問われたことは在日米軍基地の合憲性。強いて言うならアメリカの集団的自衛権を行使して、日本に駐留することの合憲であって、日本の集団的自衛権なんてどこにも問われていない」(小林氏)と完全否定される始末。さすがにここにきて、底が浅すぎるその場しのぎの拡大解釈や的外れな言い訳に、身内や長老議員からも大きな批判を受け始めている。その劣勢を払しょくするためか、14日には安倍首相が維新の党最高顧問の橋下徹大阪市長と会談。安保法制反対で共闘姿勢を強める野党分断を狙い、安保法制に対し、何らかの協力要請をしたという話も伝わっている。

 なぜそこまでして、安保法制成立を急ぐのかは「安倍首相がアメリカで安保法制は夏までに成立させると約束してしまったから」(野党関係者)というがもっぱらの見方。安倍政権にとって米国との約束が最優先で、もはや「時間をかけて、ジックリ審議する」という選択肢はないようだ。

◇安倍内閣は独裁の始まり

 さてこの日、行われた日本記者クラブの会見で、まず長谷部氏は自民党の推薦とされた経緯を、こう説明した。

「私は何度か国会参考人として出掛けたことがございますが、自分が何党の推薦なのか、よくわからない。行ってみるとアナタは何党の推薦ですと言われることもありますし、そうでないこともございます。6月4日の場合も、自分が何党の推薦なのかをハッキリ自覚をしたわけではございません」

 そして嫌味たっぷりにこう語った。

「今の与党の政治家の方々は、参考人が自分にとって都合の良いことを言った時は『専門家である』とし、都合の悪いことを言った時は『素人だ』という、侮蔑の言葉を投げつける。自分たちが是が非でも通したいという法案、それを押し通すためなら、どんなことでもなさるということなんでしょうか」

 同席していた小林氏も同じことを語っているが、こちらはもっと過激だ。

「30年以上、自民党のいろいろな勉強会に呼ばれて付き合って。最近は呼ばれなくなりましたけど。感ずるのは、意見が違うと怒りだす人が多いですね。意見が合うと急にプロフェッサー、ドクトル扱いにはなるんですけど、合わないと『小林さん、アンタね』になっちゃうんですね。『現実知らねえよ』とかね。『スゲー、やくざだ』と思うこと、いろいろ経験しました。これはやはり、思い通りにならないと我慢ならない。これはやっぱりお坊ちゃんの体質ですよね。苦労が足りないんだと思います」と、もうケチョンケチョンなのだ。

 お二方とも、ふだんは自説を冷静沈着に解説する憲法学者。それが「やくざ」という言葉まで飛び出すとは、よほど腹に据えかねた現実がそこにあったとしか思えない。特に国会審議では、意にそぐわない発言者にキレまくる安倍首相を見ていると、まさに〝言い得て妙〟の発言。小林氏はさらにこんな言葉を安倍政権に投げかけた。

「安倍内閣は憲法を無視した政治を行おうとする以上、これは独裁の始まりなんですね。本当に心配しております」

 国民主権の民主国家に独裁は最もそぐわない。憲法学者に〝独裁〟懸念を持たれるところに、安倍政権の危うさが見え隠れするが、当の安倍首相は強気一辺倒。橋下氏との会談も、おおむねうまく運んだのかもしれないが、この日の自民党役員会で「自信をもって(安保法制関連法案成立に向け)やっていきたい」と述べている。

◇ワラはしょせんワラ

 さて高村副総裁や菅官房長官など政権中枢が「集団的自衛権は合憲」とする拠り所となっている砂川事件の最高裁判決に対し、前出・小林氏の解説と同様、長谷部氏も政府の見解を真っ向から否定してみせた。

「砂川事件で問題とされたのは日米安全保障条約の合憲性でありまして、同条約は日本の個別的自衛権とアメリカの集団的自衛権との組み合わせで、日本を防衛しようとするものであります。日本が集団的自衛権を行使し得るか否かは、全く争点にはなっておりません」としてこう続ける。

「これは引用ですが、『我が国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛のための措置を取り得ることは、国家固有の権能の行使として当然のこと』、以上が引用ですが、この文言が現れる判決文の段落はこれまた以下引用ですが『憲法9条は、我が国がその平和と安全を維持するために、他国に安全保障を求めることを何ら禁ずるものではない』、以上が引用です。そういう結論で締めくくられております。この結論を引き出すために、日本には自衛力がある、自衛権がある、と最高裁は指摘をしているにとどまります。それだけです!」

 長谷部氏はこうも言った。

「ワラにもすがる思いで砂川判決を持ち出してきたのかもしれませんが、ワラはしょせんワラ、それで浮かんでいるわけにはいきません」

 安倍政権発足時、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」…いわゆるアベノミクスの3本の矢を掲げ、景気対策を推し進めた。その効果はまだ判断はつきかねるが、どうも安保法制に関しては放った二の矢、三の矢も効果がないどころか、いよいよ国民からソッポを向かれかねない危機的状況に陥っている。一応、「維新の党への協力要請」が第4の矢とするならば、果たしてその効果のほどは…。24日までの国会は8月24日まで、もしくは9月にずれ込むことも視野に入れて会期延長の調整に入っているが、自衛隊員の生命はもちろんのこと、将来的には日本国民全員の生命にもかかわる重要法案。われわれ国民も注視して、その成り行きを見守らなければいけないのは確かなのだ。


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1 Response

  1. 日本男児は 心に帯刀を (A.H.)月光

    日本は、いつまでアメリカが充てがったタマ無し(去勢した)憲法にしがみついているんだ。

    南米・南モンゴル・ウィグル・チベットがどうなったか。 戦う勇気のない国は、侵略を受け入れて滅ぼされる。

    若者よ 婦女子よ 目を覚ませ! 日本が完全に独立国であったことを思い出せ!

    ★日本の憲法は(真の独立国であるため)に、日本人自らが創らなければいけない。

    軟弱な護憲論者・憲法学者を叩き潰せ! 亡国推進の新聞社・報道番組・キャスターを糾弾しよう!

    ★日本男児よ、キンタマを抜かれたままでいいのか?   立つんだ日本!!!

    投稿日2015年7月1日 PM 12:46

コメント




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