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安倍内閣が高支持率のワケ

2015年6月9日(火)01時57分更新

 NHKと読売新聞社が8日、直近の世論調査結果を発表した。内閣支持率はともに前回調査(ほぼ1カ月前)よりダウンしたものの、それぞれ48%(前回51%)、53%(同58%)と不支持率(NHK=34%=同36%、読売=36%=同32%)を大きく上回る結果となり、依然、安倍内閣が高い支持率であることが分かった。

◇安倍内閣の高支持率は民主党歴代内閣のお陰?

 政治ジャーナリストのX氏は「安倍内閣の高支持率は、安倍首相の政策能力や指導力に期待するというよりは一にも二にも、国民に根付いてしまった民主党政権時のトラウマが根底にある」としてこう続ける。

「NHKの世論調査で出た数字で、まず目を引いたのは安倍内閣を支持する理由が『他の内閣よりよさそうだから』が実に41%もあったこと。一方で『実行力があるから』はその約半数の21%、『政策に期待が持てる』は12%しかなかった。要するに、安倍内閣を全面的に支持するというより、他に信頼できる人材がいないからという消去法。そういう意味ではNHKの世論調査の結果は、面白かった」

安保法制で叩かれても、意外と支持率が安定している安倍政権(写真と本文は直接関係ありません)

安保法制で叩かれても、意外と支持率が安定している安倍政権(写真と本文は直接関係ありません)

 X氏の話す民主党政権時のトラウマだが、民主党はまず2009年の総選挙で圧勝し、自民党に代わり政権を奪取、鳩山内閣が発足した。発足直後の支持率は、実に8割に迫る勢いで、国民の期待を一身に集めていた。ところが早々に鳩山首相の化けの皮がはがれ、支持率は急降下。最後は沖縄・普天間基地の移設問題でレームダック状態(支持率は20%以下)に陥り、わずか9カ月で退陣した。その後を引き継いだ菅内閣も東日本大震災の対応のマズさなどで国の内外から大きな批判を受け、やはり発足当初の70%近い高支持率が、最後は10%台まで落ち込み、1年3カ月弱で退陣している。その後、野田内閣が発足し、当初は60%近い支持率があったが、1年4か月後に退陣する際は4割を切る支持率に低下していた。

「野田内閣は消費増税問題もからみ、国民の支持を失っていった。というより、すでに鳩山、菅両内閣で国民の信頼を完全に裏切ってしまい、民主党は12年の総選挙で自民党に大惨敗、政権を明け渡すことになった。要するに国民の間に『民主党に政権をゆだねた失敗』が今も引きずり、その反動で、その後に発足した安倍政権への期待感につながっている」(X氏)

◇安倍政権にはツキがある?

 ある兜町関係者はしみじみとこう語る。

「最近の株高はアベノミクス効果だとしきりにその実績をアピールする向きもあるが、景気がいいと騒いでいるのは別に日本だけでない。2008年のリーマンショック以降、冷え込んでいた世界経済がここ2~3年の間に回復し始め、ニューヨークのダウ平均などは高騰を続けている。先月19日(現地時間)には史上最高値(1万8312㌦40㌣=終値ベース)を更新したばかり。このところ下げてはいるが、それでも堅調な動きを見せている。ただ経済は株だけでなく、為替をはじめ、いろんな要素が絡んでくる。やはり最近の行き過ぎた円安は気になるところで、株高ばかりに目がいくのは大間違い。売上アップ、ベアアップで浮かれているのも一部の大企業だし、政府が胸を張れるほど景況感が大幅に改善されているわけでもない。先行きはまだまだ不透明だ」

 民主党政権時は世界的に不況風が蔓延し、また東日本大震災など未曾有の大災害が発生。政権運営上、かなり厳しい環境に置かれていたのは間違いない。

「そういう意味では、安倍政権はツイているんじゃないですか。もし安倍さんが鳩山さんや菅さんと同時期に総理大臣やっていたらどうなっていたんでしょう。そんなに変わらなかったどころか、もしかすると…。タラレバ論議はやめましょう。まあ鳩山さんを見ていると、政界引退しても国内外で様々な問題を引き起こしているわけだから、やはり民主党政権発足時に鳩山さんが総理になった時点で、民主党は終わっていたんでしょうね」(本サイト愛読者の50代の商社幹部)。

◇強引な安保法制審議、国民の大半はノー

 話は安倍内閣支持率に戻すが、突出するほどではないにせよ、5割前後の安定した支持率を堅持する安倍政権。

「そりゃあ内閣支持率は高いに越したことはないが、安倍政権にとって5割前後で一進一退を続けていた方が居心地はいいハズ。もちろん急落は絶対あってはならないが、急上昇も避けたい。ジェットコースターのような支持率だと、それこそ民主党政権の二の前になりかねない。安倍政権にとって、今の世論調査の結果がベストポジションだろう」(X氏)。

 ただ今国会の重要法案である安保法制の成立に対する国民の目はかなり厳しいものになっている。NHKでは「賛成」が18%、「反対」が37%、「どちらともいえない」が37%となっており、政府が行っている国会審議での説明は「十分説明している」がわずか7%で「十分説明していない」の56%を大きく下回る結果になった。また自衛隊員のリスクは「増える」が72%と圧倒的多数を占め、「増えない」の6%を遥かに凌駕、「自衛隊員のリスクは増えない」と言い張る政府見解を真っ向から否定する結果になっている。

 これは安倍政権寄りと言われる読売新聞の読者も同様で、政府・与党の法案が「内容を十分に説明していない」とする人が80%に達し、「十分に説明している」の14%を大きく上回っている。また安保法制の整備に「賛成」(40%)が「反対」(48%)を下回ったが、実は同紙の前回調査では「賛成」が46%に対し「反対」が41%と、もともとは「賛成派」が多かった。いわば保守系の読者からもノーを突きつけられた形になっているのだ。前出のX氏はこう話す。

「4月末の訪米の際、米連邦議会の上下両院合同会議で国会審議を差し置いて『夏までに法案を成立させる』と、まるで宇宙人的と称される鳩山元首相並みの〝国際公約〟をしてきた安倍政権にとって、かなり厳しい暗雲が立ち込め始めたといっても過言ではない」

 先日も与野党推薦の憲法学者からノーを突きつけられ、さらに多くの世論も安保法制を強引に推し進めようと安倍内閣に反旗を翻している。政界を見渡しても、確かに政権運営を任せられる適任者が全く見えてこない。麻生さんに谷垣さん、石破さんに小池さん、いっそのこと小泉ジュニア…でも皆、帯に短しタスキに長し…。よもや民主党に政権を戻すわけにもいかないし、維新の党や共産党…それこそ天地がひっくり返っても政権政党になれるとは思えない。やはり、いまの安倍政権でいくしかないとするならば、せめて本サイトからエールを送るつもりでひと言。

 驕る平家は久しからず――権力を笠に着て強引な手法で事を推し進めても反感を呼ぶばかり。ここは一歩も二歩も後退しつつ、根気強く国民の総意をまとめることに尽力されてはどうだろうか。決して本サイトは安倍政権を敵視はしていない。権力が見え隠れする強引な政権運営に、危機感を覚えている。それさえなければ、祖父(岸信介元首相)や大叔父(佐藤栄作元首相=ノーベル平和賞受賞)に匹敵するような歴史に名を残す宰相になるかもしれない。そう期待しつつ、心から頑張ってほしい、そう願うばかりだ。


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