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吸血鬼ドラキュラが旅立った

2015年6月12日(金)02時05分更新

 ドラキュラが死んだ。心臓を杭で突かれたわけでも、銀の弾丸を撃ち込まれたわけでもない。静かに静かに、その生涯を終えた。英国の映画俳優、クリストファー・リーさんが去る7日、死去していたことが11日遅くわかった。享年93。英デイリー・テレグラフ紙電子版が報じたところによると、リーさんは呼吸器疾患で入院しており、その病院で亡くなったという。

ドラキュラと言えばリーさんだった(画像は70年公開=日本未公開の「血のエクソシズム/ドラキュラ復活」DVD=ジェネオン・ユニバーサル)

 人の生き血を吸い、また吸われた人間もドラキュラになる。1958年公開の「吸血鬼ドラキュラ」のドラキュラ伯爵役が大当たり。リーさんは一気にホラー映画界のスターダムにのし上がった。特にこの映画でドラキュラハンターのヴァン・ヘルシング博士役で共演したピーター・カッシングさん(1994年死去、享年81)とは長年、22本のホラー映画に共演。ホラー映画界の最強コンビと謳われた。前年に公開された「フランケンシュタインの逆襲」では、フランケンシュタイン博士役をカッシングさん、セリフのない怪物役をリーさんが演じている。中高年の多くは、きっとどちらかの映画を見て、ホラー映画の怖さ、楽しさを初体験したに違いない。

 そんなハマり役のドラキュラだったが、リーさん自身、役柄が定着するのを嫌い、73年公開(日本未公開)の「新ドラキュラ/悪魔の儀式」を最後に、ドラキュラ役を卒業、この時もカッシングさんがヘルシング博士役を演じている。もちろん名優リーさんは、ドラキュラ以外にも数々のヒット映画に出演。74年公開の007シリーズ第9作の「黄金銃を持つ男」ではボンド(ロジャー・ムーア)の敵役スカラマンガ役、2001年に第1作が公開(日本公開は02年)され大ヒットした映画「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズでは魔法使いのサルマン役、02年公開の「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」、05年公開の「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」では、ともにシスの暗黒卿ドゥーク伯爵役を演じた。

 スリムで背が高く(若い時分は195㌢前後あったという)、まさにドラキュラ然としたその姿で、見るものを恐怖のどん底に突き落とし、歳を取ってからは円熟味のある演技で年配だけでなく、若い世代にも存在感を示してきた。14年末公開の「ホビット 決戦のゆくえ」の魔法使いサルマン役が遺作となったリーさん。90歳を超えてもなお現役を続け、その出演本数は実に250本以上に上り、ギネスにも載る。まさに映画に生き、そしてこの世を去った名優は、これからカッシングさんと会い、きっと昔話に花を咲かせるに違いない。合掌。


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