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エボラウイルスよりもっと怖い存在

2014年8月14日(木)09時26分更新

 地獄の沙汰もカネ次第!? 連日、猛威をふるうエボラ出血熱(以下エボラ熱)。過去最悪の規模で広がりを見せており、マスコミ各社も世界保健機関(WHO)の発表をもとに大騒ぎ。ところが大流行、大流行と大きく取り上げる割に累計患者数は2000人、死者数は1000人を超える程度。もちろん、今後、被害が拡大する可能性は高いし、ひとたび感染すると致死率が極めて高い殺人ウイルスだけに、大問題であるには違いない。ただどうだろう。これが西アフリカ諸国ではなく、先進諸国でも流行する病だったら…。とっくに予防ワクチンや治療薬が開発され、〝不治の病〟ではなかったという見方もある。医薬業界に見え隠れする本質、また先進諸国のエゴが騒動を大きくしているという意見もあって、意外と考えさせられることが多い今回のエボラ騒動。本当に怖いのは、果たしてウイルスなのか。それとも…。

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外務省、厚労省でもエボラ出血熱関連で注意を呼び掛けている(両省のHPから)

外務省、厚労省でもエボラ出血熱関連で注意を呼び掛けている(両省のHPから)

 13日(現地時間=以下同)のWHOの発表によると、11日までにエボラ熱が原因とみられる死者数は1069人、感染が疑われる患者数は1975人に達していることが明らかになった。WHOでは2009年の新型インフルエンザ、今年5月のポリオの大流行に続き、史上三度目の非常事態宣言(国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)を出し、注意を呼び掛けている。

 また感染、死者数ともに多いシエレネア、リベリア、ナイジェリア、ギニアの西アフリカ4カ国すべてで、非常事態宣言を発令、国境警備の強化や遺体の移送制限などの措置を取り、対応に当たっている。

◇死に至る殺人ウイルス

 エボラ熱が恐ろしいのはその致死率。空気感染はせず、感染者の血液や分泌液、体液などによる接触感染によるが、ひとたび感染してしまうとその致死率は20~90%、50~90%、いや80%以上と諸説あるが、とにかく高いこと。感染すると、まず突然の発熱と衰弱が始まり、嘔吐や発疹に苦しめられ、最後は鼻や口、尿などから出血し死に至るというものだ。

 もともとエボラ熱は1976年、最初に発症して死亡した男性がザイール(現コンゴ)を流れるエボラ川近くの出身だったことで命名された。今回は昨年12月、ギニアで死亡した2歳男児がエボラウイルスを持つコウモリと接触、感染したのが最初ではないかとの報告もあるが定かではない。

 非常事態宣言を出している西アフリカ諸国やWHOもそうだが、先進各国も様々な注意喚起を行っている。日本では厚生労働省がエボラ熱の脅威を解説し、外務省は西アフリカ諸国への渡航に対し、「不要不急の渡航は延期してください」と呼びかけている。

 また日本には現在、直接西アフリカ諸国から入国できる渡航手段はないが、各地の国際線ターミナルではポスターなどを張って注意を喚起。成田空港のように乗り継ぎを含めた入国者に対し、サーモグラフィーで発熱検査を実施するなど、検疫強化に努めているところもある。

◇条件次第で未承認薬投与も認める

 日本だけではない。「感染者を入国させないことが、エボラを自国に蔓延させない最善策」とばかりに各国ともに、神経をとがらせている。それでもリベリアでエボラウイルスに感染し、本国に搬送されたカトリック司祭のスペイン人男性(75)が12日、搬送先のマドリードの病院で死亡した。いまのところこの男性から他者への感染報告はないが、いくら完全密封された医療器材に入れられ運ばれてきたとはいえ、エボラ患者をスペイン国内に移送したことには賛否が分かれたのも確かだ。

 大騒動のさ中、WHOは未承認薬についても一定の条件をクリアすれば、エボラ患者への投与を認める声明を出している。また日本では富士フイルム傘下の富山化学工業が開発した「アビガン錠」(一般名ファビピラビル)が注目を集めている。もともと厚労省から新型インフルエンザに限って製造販売を認可されている薬で、使用も新型インフルエンザに限定されている。ただ海外でのマウス実験では、エボラ熱にも効果があったとの報告もあり、治験に向けての準備に入ったとの話もある。

◇医薬業界にとって貧困国は商売にならない?

 エボラ熱が確認されてすでに40年近く。これまでも100人単位の感染、死者数が出る流行年はあったが、世界に蔓延することはなかった。それに、流行するのはあくまで今回の西アフリカ諸国のような貧しい国ばかり。先進国に広がったことは一度もない。

 かつて日本をはじめ、先進各国ではコレラやペストといった致死率の極めて高い伝染病(感染病)に苦しめられた時代はあった。そのつど特効薬を開発し、病を克服してきた歴史がある。

「昔は日本だってそうだが、先進諸国の多くも不衛生な環境で、様々な感染症を蔓延させる土壌があった。近代化とともに世の中も衛生的になっていき、さらに新薬の開発があって、人類はこれら不治の病を克服してきた歴史がある」というのはある医療関係者。

「恐らく」と前置きしてこの医療関係者が言う。

「万が一、エボラウイルスが先進各国に蔓延するようなことがあれば、すぐにでも新薬は開発される。ただいかんせん、いま新薬を開発したところで、相手にできるのは貧しい国だけ。それも爆発的に蔓延しているといっても数千人、数万人単位じゃ商売にならない。批判されることを承知で申し上げれば、医薬業界にとってカネにならない新薬開発など消極的にならざるを得ない。エボラの治療を阻害している最大の理由はそこにある」

 新薬には臨床実験など様々な過程はつきものだが、その開発には100億とも200億、モノによっては何百億円ともいわれる経費がかかるといわれている。

「製薬会社といってもほとんどが民間企業です。正直、慈善事業で行っているわけではない。莫大な開発費を回収した上、儲けを出さなければ意味がない」(同)

 本来、WHOあたりが音頭をとり、新薬開発のための基金でも作ればよさそうなものだが「医薬業界というのは、これが利権の巣窟のようなところもあって、そう簡単な話ではない」(同)という。

 実際、日本では昨年、官民初のパートナーシップとして外務省と厚労省、民間の大手製薬5社などが出資して開発途上国向けの新薬開発を支援するグローバルヘルス技術振興基金を発足させた。新薬開発への支援をしており、今年は「顧みられない熱帯病」(住血吸虫症、住血吸虫症)に総額で約6億8000万円、「結核ワクチン」の開発に約5億6500万円を助成すると発表している。

「ただこれも、ないよりあったほうがマシといった程度の基金。仮に新薬が開発されたとしても、貧困国にはそれを購入する資金的余裕がない。結局、売れなければ製薬会社も本腰入れて開発に着手しない。悪循環は続くだけ」(同)

◇エボラも怖いが…

 日本ではかつて年間10万人以上(明治19年に約10万8000人)もの死者を出して大流行した伝染病がある。今では海外渡航で感染が確認される程度になったコレラがそれで、国内感染は2006年の1人以降、報告はない。もちろんコレラで死ぬ日本人もいない。しかし、このコレラは国外、それも貧困国や発展途上国に目を向けると、今でも全世界で年間300万人とも400万人とも言われる感染者がいて、そのうち10万人以上の死者が出ているといわれている。エボラ熱どころの数字ではない。

「結局、いま世界が騒いでいる最大の理由は、一にも二にも、自国にエボラウイルスを入り込ませないこと。西アフリカの患者のことは二の次三の次。先進各国が本当に西アフリカ諸国の人たちを救いたいと思っているなら、コレラがそうであるように、もっと早い段階から救えていたはず。もちろん国境なき医師団の人たちや、そして先日亡くなったスペインの神父のように救いたい一心で現地に向かう人たちがいるのも確か。でも殊更エボラ、エボラと騒いでいながら、結局は安全地帯にいる人が、どんなに騒いでも偽善にしか見えない。それは私も含め…嘆かわしい限り」(同)

 もちろん治療法が確立されていても、劣悪な住環境を変えない限り、救済にも限界があるのもまた確かだが…。

 別にエボラだけの話ではない。日中韓、それにかつての米ソ冷戦時代のように、世界がギクシャクし始めている。結局、自国だけが幸せならそれでいいと皆が思い始めたとき、世の中は常に最悪の結末に向けカジを切りはじめる。どんな殺人ウイルスも、決して人間には敵わないと言えば過ぎた言い方になるのだろうか。参考までに先の第二次世界大戦で亡くなった日本人は約310万人(軍人210万人、民間人100万人)。全世界では6000万人とも8000万人ともいわれる尊い命が失われている。


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