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女子高生猟奇殺人はナゼ起きたのか

2014年7月29日(火)12時35分更新

犯行直後と思しき血染めの左手の写真が、ネットに公開されていた

犯行直後と思しき血染めの左手の写真が、ネットに公開されていた

 タラレバを言ったらキリがない。もちろんそんなことはわかっている。でも…、もし………防げるなら…。長崎県佐世保市で起こった、女子高生殺人事 件は、世の中に大きな衝撃を与えた。常軌を逸した犯行に、被疑者である女子高生の精神鑑定が待たれるが、しかし単純に狂気の沙汰と片付けては、この手の犯 罪はなくならない。ナゼ起きて、どう対処していくか――それをひも解くカギは、ずばり「世の中がこんなに発達発展していなければ」にある。

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 長崎県佐世保市の県立高校1年、松尾愛和さん(15)が殺害されたのは26日夜、殺害現場となった松尾さんの同級生であり犯行に及んだA子(16)の自宅だった。

 松尾さんはハンマーのようなもので後頭部を何度も殴られ、最後は首を絞められ殺された。司法解剖の結果、頸部圧迫による窒息死とされ、遺体の近くには殺害に使ったとみられるハンマーとノコギリが発見されている。

  世間を震撼させたのは、その遺体の首と左手首が切断され、開腹されていたこと。加えて、関連性はまだ捜査中で断定はされていないが、殺害後とみられる画像 がインターネットにアップされていたことだ。遺体こそ写っていないものの、合計7枚ある写真の中には、血まみれになったA子らしき手の写真も複数枚含まれ ていた。

◇果たして家庭環境が引き金なのか

 佐世保市では2004年6月、小学6年生の女子児童が同級生の女子児童をカッターナイフで切りつけ殺害する事件が起きている。事件後、再発防止に努めてきた長崎県教委が、10年の節目の今年6月、「命を大切にする教育」を再確認した矢先の出来事だった。

「命は大切」、果たしてこの当たり前とも思える言葉は、あえて言葉に出したり、スローガンとして掲げなければならないものなのだろうか。

「私 は小学生のころ、悪友と一緒にカエルの口に爆竹仕掛けて楽しんでいました。命の大切さって、多分、その時分意識したことはなかったんだと思いますよ。ただ 人間はもちろん、犬や猫、身近な動物たちは殺しちゃいけないというのは、子供なりにわかっていたはずです。命の大切さなんて、箸の上げ下げじゃないんだか ら、そもそも教えられて身につけるものじゃないでしょう」というのは50代の大手食品製造メーカの幹部職員。

 A子は昨年、最愛の母をがんで失い、父はすぐに再婚した。継母とは反りが合わず、この4月から犯行現場となった父名義のマンションで一人暮らしを始めたという。

「複雑な家庭環境が犯行の引き金になった」などと、したり顔で解説する心理分析の専門家もいるが、果たしてそれで片付くものなのだろうか。

◇生活様式の変化が元凶か

 A子は警察の取り調べに対し、「人を殺して、遺体をバラバラにしてみたかった」とその動機を話し始めているというが、そもそも、なぜそのような気持ちになったのだろうか。

 犯罪心理学の専門家さえ結論出ない話に、素人の考えもないが、前出の殺蛙経験のある幹部氏はこう言う。

「生活様式の変化が、すべての元凶でしょうね」と言ってこう続ける。

「我々 の子供の時代って、遊ぶといったら外ですよ。泥だらけになって、時にはスリ傷つくって遊んでいた。その中で、時にはカエルを殺したり、トンボの羽を引きち ぎったり…。結構残酷なことしていましたよね。でも人を殺す場面は、せいぜいテレビや映画で見るくらい。それも殺人って、決して正当化されるものじゃな かった。でも今は、テレビゲームの世界では平気で人も殺すし、それが正当化されることもある。バーチャルの世界で人を殺していたら、実際に人を殺してみた いと思う子供が出てきたっておかしくないでしょう」

 かつて本サイト記者が18年前、任天堂の山内溥社長(当時)に1時間に及ぶ単独インタビューをし、ずばりこう質問したことがある。

「最近のテレビゲームには格闘ゲームをはじめ、かなり暴力的なものが増えてきた。それが子供たちに悪影響を及ぼし、いじめや犯罪の引き金になっているのではないか」

 山内社長の答えはこうだった。

「そもそもテレビゲームは、家族みんなが楽しく参加できるものでなくてはいけない。そう考えると格闘ゲームが主流というのは困る」としたうえで、こう苦しい胸の内を語った。

「行き過ぎは良くないが、ただメーカーとしては、ユーザーの好みに合わせたソフト作りをしていかなければいけない」

 実はテレビゲーム市場では2006年、ゲームソフトを年齢別に5段階に分類し、最も年齢区分の高いソフトをZ区分と位置付け、18歳未満に売ってはいけないという自主ルールを設けている。

◇便利な世の中が犯罪を引き起こす

「テレビゲームというより、パソコンやスマホなど情報通信の普及が子供たちを狂わしているんでしょう」

 こう話すのは、地方の県立高校で日本史を教える40代後半のある教師だ。

「皆さんもご存じでしょうが、パソコンやスマホって、凄いでしょう。まあこれだけ様々な情報が手元の操作で事足りるんですから、子供たちだっておかしくなりますよ」

  スマホにパソコン…情報通信時代はあまりに便利になりすぎた。ネットを開けば、様々な情報は氾濫し、調べられない情報はない。昔は電車賃をかけて国会図書 館まで足を運び、何時間もかけて調べた案件が検索エンジンで一発回答、通販だって地球の裏側からでも欲しい品物が届く。

 ネットを開けば、 グロテスクな衝撃映像は氾濫し、中には人間を切り刻む映像まで存在するというおぞましい時代。しかもネットの世界は、いくら日本国内で規制をかけても海外 のサーバーから配信されるサイトには、基本的に規制はかからない。まさに無法地帯と化しており、無修正のアダルトサイトさえ未成年が見放題の時代なのだ。

「か つてはゲームの世界で、現実世界と仮想世界の区別がつかずに犯罪に走るケースもあったでしょうが、いまは実際の映像を見て犯罪に興味を持つ子供もいること でしょう。もちろん、これは日本に限った話ではありませんが、もともと精神面で異常をきたし、さらに犯罪因子を持った子が、暴力的な映像が引き金になって 犯罪を実行に移すケースはあると思います」

 こう話すのは、都内の心理カウンセラーだ。

 A子が殺人を犯し、その遺体を切断した直接の理由は「興味があったから」なのだろう。しかし、もともとの引き金があまりに便利になった世の中だとすれば「この世を一度、スマホもパソコンも一切ない不便な世界に逆戻りさせること」(前出のカウンセラー)なのかもしれない。

 考えてみれば、便利になったことと引き換えに、これまでも人間は落とさずに済んだ命を落としてきた。自動車がこの世になかったら…、飛行機なんてなかったら…、大切な人を奪われた遺族の中には、そう悔やむ人も少なからずいる。

「被害者だけじゃありませんよ。便利になった世の中が、ある意味、犯罪者を生み出しているのだとすれば、被疑者もまた被害者なのかもしれません」(同)。

 まずは松尾愛和さんのご冥福を祈るばかりだ。


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