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カジノが合法化しても日本人は蚊帳の外!?

2014年8月19日(火)09時42分更新

「日本人はお断り」――実はこれ、反日機運が一向に収まる気配のない中国や韓国での話ではない。れっきとした日本国内での話だ。2020年の東京五輪を目指し、日本でのカジノ合法化の流れが前進する中、「仮にカジノが日本にできても、日本人は最初から出入り禁止」という話が出てきたのだ。カジノ合法化を楽しみに待つファンからは「エッ、どうして?」「そりゃあないよ」と怨嗟の声が聞こえてきそうだが、理由はズバリ「ギャンブル依存症の増加懸念」にあるというが、果たして、この措置は正しいか否か、専門家の話を交え、検証した。

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日本でカジノが合法化されても日本人は出入り禁止という話も出てきた(写真はラスベガス)

日本でカジノが合法化されても日本人は出入り禁止という話も出てきた(写真はラスベガス)

 俗称「カジノ合法化法案」(通称IR推進法案=正式名称・特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案)は、いよいよ秋の臨時国会で成立する可能性が高くなり、関係各所の動きが激しさを増す。そこに厚生労働省が待ったをかけた。カジノが日本で認可されると懸念されるのが、ギャンブル依存症の増加。カジノ解禁反対派が真っ先に挙げる反対理由の一つだ。

◇乱暴すぎる論調が多すぎ

 もともと日本国内でのカジノ解禁には反対していない同省だが、「IR(統合型リゾート)推進法は、もともと外国人観光客を増やし、観光立国を目指すためのもの。日本人のギャンブル依存症患者拡大が懸念されている以上、カジノ利用は観光やビジネスで来日する外国人に限るべき」(同省関係者)と話す。

 同省では今後、関係各所に働きかけていくというが、「そんな単純な問題じゃない」というのはカジノ事情にも明るい「21世紀エンターテインメントを考える会」代表の井狩友亨氏だ。カジノ合法化が現実味を帯びるに従い「乱暴すぎる論調が多すぎる」として様々な問題点を挙げた。

 まずギャンブル依存症の増加に関しては「何もせずにそのまま合法化すると、確かに依存症は増える」としたうえでこう話す。

「カジノを合法化している国の中には、カジノ施設への入場制限などを行い、ギャンブル依存対策を講じているところもある。オーストリアカジノのように、家族の申し出があればその人物の入場を禁止させることもできる。そもそもカジノをするためには、事前登録が必要なところもある。もし反対派が依存症を問題にするなら、それらの国を上回るような入場制限を設ければいい」

◇理想はラスベガス型

 井狩氏は事前登録制には大いに賛成で、収入制限や犯罪歴を加味したうえでIDを発行。場合によっては指紋や虹彩といった生体認証システムでカジノ施設への出入りを管理するべきと指摘した。

「そもそも借金をしてまでギャンブルするなど言語道断。だから事前登録の際は、自己申告ではなく、本人同意のもとですべての資産を明らかにさせる。年収は200万円、300万円と少なくても構わない。ただ収入と借入金の割合を考慮して、その人が1日あたり、もしくは週間、月間、年間いくらカジノに使えるかその額を決める。免許更新のように2~3年に一度でも、極端な話毎年でもいい。資産審査にパスした人だけがカジノができるようにする。これくらいやってほしい」

 井狩氏が最近のカジノ合法化の流れの中で、一番腹立たしく思っているのは「面倒なことから逃げていること」。井狩氏の提案通り、依存症対策を講じるのは確かに面倒この上ない。何より、常に縦割り行政の弊害が叫ばれる日本にあって、井狩氏とは別のカジノ専門家は「そんなの不可能に決まっている。理想論を振りかざしていたら、前に進むものも進まない」と切り捨てた。

 井狩氏は言う。

「私が理想としたカジノは一にも二にもラスベガス型。今のままの計画では、国際会議場なども併設されるというが、結局は単なる賭博場としてだけのカジノの建物がポツンとあるだけになってしまう。だからギャンブルだと批判されるし、華もなければ夢もない。そんなカジノだったら韓国にもあるし、それこそ今話題のシンガポールやマカオに行けばいい」

◇人気テーマパーク内にカジノ構想

 東京ディズニーリゾート内、いや大阪のユニバーサルスタジオジャパン内にカジノができるのでは、という話も出ている。「千葉や大阪はもともと自治体が率先してカジノを推進している。ディズニーはどうかわからないが今、ハリーポッター人気で勢いづくUSJは第2テーマパーク構想の中にカジノの設置も取りざたされている。橋下大阪府知事はガチガチのカジノ推進論者だし、これは注目している」というのはあるシンクタンク関係者だ。

 井狩氏は、テーマパーク内のカジノ構想には一定の評価はするが「ポツンとカジノがあるよりはマシという程度」と言って持論を展開した。

「私は北海道や沖縄など、広大な遊休地がある場所を開発し、一大レジャー拠点を作るべきだと思ってカジノを推進してきた。やるならとことんやる。別に東京でも大阪でも、それなりの広大な土地が確保できればどこにつくってもいい。ただパチンコ店に毛の生えたような施設を全国に散りばめたって、結局、失敗するだけ」

 多くのカジノ関係者がそうであるように、井狩氏の構想には前出のカジノ専門家も「カジノを運営する上ではオペレーティングシステムなど専門的な知識と経験が必要不可欠。〝ローマは一日にして成らず〟ではないが、日本にラスベガス並みのレジャースポットを作るなんて夢のまた夢物語。カジノを舐めてもらっては困る」と一笑に付した。

 井狩氏はこの反論に、さらに反論する。

「確かに何もないところから生み出すには時間と労力が必要だ。しかしカジノに関しては、それこそそのオペレーティングシステムやルール、また今回厚労省で問題にした入場制限もそう。お手本になる先駆けが数多く存在する。中国のようなパクリ文化はいただけないが、そもそも日本は先進諸国のいいところをうまく模倣して、さらに上を行く技術やルールを確立させてきた文化がある。大体、この手の話を批判するのは、外国かぶれしたような連中だ。端っから無理だなんて言っている連中のほうがよっぽど無責任。結局、面倒なことから目をそむけているだけ」

◇日本人を締め出せば、カジノのアングラ化が加速?

 何はともあれ、議論は尽きないが、こういう意見もある。

「井狩さんの言うようなカジノができれば、確かに夢はある。でもいまの日本の行政システムでは、どうしても限界がある。その限界の中でギャンブル依存症を回避させるには、日本人を出入り禁止にするのが手っ取り早い。またラスベガス型のレジャースポットをつくるのも、カジノ自体のシステムやルールというより、建築基準やら環境基準…いくつもの省庁間、また自治体内での調整が不可欠で、乗り越えなければいけない壁が山ほどある。2020年をカジノ設置の一つの目安とするなら、やはりあまりに時間がなさすぎる」(観光事業関係者)。

 カジノから日本人を締め出すのはいいが、あまり露骨に差別すると、今度はアングラカジノがはやるという懸念もある。「今のようにカジノが違法であっても非合法カジノは存在する。今年に入ってガーナ大使公邸で夜な夜な行われていたバカラ賭博が摘発されたが、じゃあIR法が成立したら、このようなケースはどう判断されるかなど細かな問題も生じてくる。中途半端に日本人だけを排除しても、それこそ裏の世界、闇の世界が喜ぶだけ」(警察関係者)。

 カジノ合法化問題はかなり奥が深く、丁半バクチのように簡単には勝負がつきそうにないのは確かなようだ。


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