「クレーマー天狗」~横並びはゴメン
アラカン(還暦)ならぬアラサン(傘寿)世代の本サイトご隠居顧問が、あらゆる話題に斬り込む『クレーマー天狗』。今回、ご隠居のターゲットになったのは、このところ連日報道されているアシアナ航空機事故に対し、それを報道するテレビ各局だ。「どこを回してもみんな仲良く金太郎アメ報道」とご隠居のクレーマー気質に火がついた。
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4月20日朝のニュースによると、広島空港で事故を起こした韓国アシアナ航空は、この事故機の乗客73人に対して、ケガの有無にかかわらず1人に付き5000㌦(約60万円)の見舞金を支払うことを発表した。つい2日ほど前、1年前に沈没したままのセウォル号の遺族に対し、朴大統領が「引き揚げの準備を急いでいる」と曖昧な発言をして怒声を浴びたばかりだが、この大事故に比べれば早い対処だった。
◇乗客も視聴者も〝おいてけぼり〟
まだ、事故原因について国交省からの公式発表はないが、テレ朝の取材を受けた航空評論家・S氏(もとパイロット)が初めてこう断定していた。「これは同機のパイロットのヒューマン・エラーと言うより、もう無謀操縦と言った方が正しい」と。もし、着陸前にローカライザーに接触していなければ、同機は滑走路に激突→炎上し、乗客・乗員のほとんどが犠牲になったところだったとも言う。「ローカライザーに車輪を引っかけたことで機体がやや上向きになった。このおかげで登り傾斜になっている滑走路に突っ込まずに済んだのです」という分りやすい大惨事をまぬかれたメカニズムを聞いて、改めて鳥肌を立てた。
この事故についてはこのテレ朝を含めて民放各社は連日ヤイノ、ヤイノと報道合戦を繰り広げてきたが、どこも例外なく「事故はなぜ起きたか」の一点張りで、乗客も視聴者も〝おいてけぼり〟にしたまんま。19日に前記の断定を下したS氏は各局に引っ張り出されてコメントを求められていたのに、どの局のキャスターも飛行機の模型を弄ぶだけでS氏の長い経験から来るこの重大発言を引き出した人はいなかった。
◇同じところをぐるぐる回るだけのニュース番組
そして、ガキじゃあるまいし、どこもかしこも評論家が答えようのない質問の繰り返しで、同じところを堂々巡りするだけ。いいですか。若いキャスター諸君。普段は社会の片隅で息をひそめて暮らしているこの年寄りだって、あなた方がぐるぐる目を回している間に感じた〝一般の視聴者が知りたいこと〟は以下の通り、た~くさんあったのに、誰もな~んにも触れてくれませんでしたね。テレビ見るのやめるぞ!もう。
①事故機の損害額はどのくらいか(修繕はできるのか、できないのか)②パイロットのミスだった場合、機長とアシアナ航空の責任(ペナルティー)は?=?壊した空港設備の賠償?事故後の空港閉鎖による空港及び欠航した他の航空各社への損害補償額は?③乗客・乗員の通関→帰宅はどうなるのか④機内に残された乗客の荷物はいつ手元に返されるのか⑤もし土産物や貴重品に破損・紛失があったら?⑥事故機はいつ、どのように空港から片付けられるのか。また、その後、事故機はどのように処分、再利用されるのか――などなど、こんなことが一般視聴者レベルの関心事ではないだろうか。
なぜ事故は起きたのか…は間もなく国交省の事故調から発表されるだろう。その時までは、どんな経験豊かな専門家が分析したとしても、想像の域を出ない。なのにキャスター諸君が出もしない結論をまとめようとするから、同じところをぐるぐる回るだけのニュース番組になってしまう。日テレ(読売)、テレ朝、TBS、フジ、どこのチャンネルを押しても「パッカーン」と同じ顔が出て来る金太郎アメなのだ。
もう一つ。アシアナ航空が「すぐにでも運航を再開したい」と言っているが、これは経営のひっ迫によるものなのか、1日でも利益を棒に振りたくないからなのか。その裏側をテレビさん、ぜひ教えて!
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