30
April , 2024
Tuesday

カジノ合法化で懸念される材料とは

2014年8月16日(土)10時44分更新

 乗り遅れてたまるか! とばかりに続々とカジノ参入に名乗りを上げる企業が出てきている。15日、私鉄大手の京浜急行電鉄(京急)が社内にカジノ推進のための部署を16日付で新設することを発表した。折しも秋の臨時国会では通称「カジノ法案」と呼ばれる「IR推進法案」(以下IR法案=正式名称・特定複合観光施設区域の整備の推進に関連する法律案)が成立する可能性が高くなっている。今回の京急をはじめ、それを見越して民間企業は優に及ばず、自治体や外国資本、さらには国・地方の政治家が入り乱れた綱引きが始まっている。大きな利権が絡むといわれるIR法は、果たしてこのまま臨時国会になだれ込み、無事法案成立というルートをたどっていくのか、それでいいのか。いま一度、検証してみた。

――――――――◇――――――◇――――――◇――――――◇―――――――――

果たして日本でも〝賭けカジノ〟は導入されるのか(写真は東京都内で開催された模擬カジノのワンシーン)

果たして日本でも〝賭けカジノ〟は導入されるのか(写真は東京都内で開催された模擬カジノのワンシーン)

 当初、6月に閉会した通常国会で成立する見通しだったIR法案。与党内での調整がつかず、結局継続審議のまま秋の臨時国会で再度、決着をつけることになった。今のところ、ほぼ可決される見通しだが、こればかりはふたを開けて見なければわからない。

 ただ法案成立の期待が高まるにつれ、政財界、また国内外問わず、IR法案の話題が頻発し始めている。

◇カジノ誘致には利権臭がプンプン

 今回、京急がカジノ合法化に名乗りを上げた理由は、やはりカジノ設置の有力候補として自社と縁が深い東京、横浜が取りざたされていることが大きい。東京では以前からお台場、最近では築地なども候補地とされ、また横浜市でも林文子市長がIR(カジノ)を経済活性化の起爆剤と位置付けており、横浜港内の遊休地などが候補地として挙げられている。

「京急だけではない。最近の様々な動きを見ていると、すべてに利権のにおいがプンプン漂ってきて頭が痛くなる」

 こう語るのは「21世紀エンターテインメントを考える会」代表の井狩友亨氏だ。1997年からカジノ研究を続け、かつて政治評論家の故室伏哲郎氏が会長を務めた「日本カジノ学会」にもオブザーバーとして参加したこともある人物だ。

 井狩氏はカジノ推進論者である一方、今の状況についてはかなり危機感を持って合法化の流れを見ているという。

「IR法は与党間で調整さえ付けば、秋の臨時国会で必ず成立する。長年、合法化を夢見てきた私にとっても、それは結構なことだが、ただ今のままでは成立させないほうがいい。というのも私はカジノを成立させるに当たって、つねに〝清廉潔白であるべき〟をキーワードに考えてきた。ところがいまの状況は官民入り乱れての醜い利権争いが始まっており、どこをどう見ても清廉潔白ではない」

◇カジノの税収は国が一括管理し、目的税化するべき

 地方自治体はこうだ。先の横浜市しかり、大阪府は橋下徹知事が当初から「大阪が第一の候補地」として名乗りを挙げ、北海道でも高橋はるみ知事ばかりか、道内候補地の一つである苫小牧市のように、6月に行われた市長選の争点にカジノ誘致を取り上げるほどになっている。またカジノ推進派の猪瀬直樹氏から舛添要一都知事に代わった東京都では、やや慎重論も出てきてはいるが、それでも2020年の東京五輪を念頭にしたカジノ誘致は既定路線。これに沖縄県や秋田県、千葉県(千葉市)などが加わり、「我が自治体を第一号に」という綱引きが激しさを増している。

 カジノに関連する売り上げは総額で4000億円、5000億円、いや兆を超すといわれるだけに、その税収も半端ではない。また従業員確保など雇用促進にもつながり、財政悪化や高い失業率に苦しむ自治体にとっては、のどから手が出るほど獲得したい権益に違いない。

「ただ」と前置きして井狩氏は言う。

「カジノで働く従業員はその地方に委ねるしかないが、税収は、絶対にその自治体だけのものにしてはいけない。国が一括管理し、目的税化するべき。もともとIR法は国家の発展を念頭に置いた法律であるべきなのに、自治体は税収すら我がものにしようとしているし、それをよしとする風潮すらある。だから綱引きが起こってしまう」

 民間企業の顔ぶれを見ると、今回の京急以外にも、アミューズメント大手のコナミはIR法が可決した直後にも新会社「コナミゲーミングジャパン」を設立すると発表しており、早ければこの秋にも開業する。また電通、博報堂といった二大広告代理店では、早い段階から社内に専門部署を設置。お台場カジノ構想では常に名前が挙がるフジテレビ、さらには三井不動産や鹿島、清水建設にセガサミーホールディングスといった名だたる有名企業が名乗りを上げている。

 また大阪商業大学や金沢工業大学にはカジノ専門の研究機関があるし、また有名無名織り交ぜてカジノ研究家、専門家を名乗る人物も多数登場している。

「嘆かわしいのは、それぞれが綱を引き合っていること。わかりやすいところでは、まず電通と博報堂。博報堂はすでに20年近くカジノの研究を続けているが、一方の電通が本腰を入れ始めたのはここ2、3年のこと。〝一日の長〟ではないが、カジノに関しては博報堂のほうがよく事情を把握している。ただ規模も組織力も電通が断然上。凄まじい勢いで巻き返しを図っている。それとともに、他の企業間でも、どこと組めばカジノで一儲けできるか、鵜の目鷹の目でグループ作りに余念がない。政治家も同じ。表面上、カジノ推進派と呼ばれる国会議員たちは超党派でIR議連を組織しているが、どこと、また誰と組めば甘い汁を吸えるかと考えている議員は少なくない」(同)

 あと専門家、評論家の中にも、「結構まともなことを言っていても、一皮むけば特定企業の太鼓持ちをしているケースもあるので、話半分で聞いていたほうが無難」(同)という。

◇外資には気を付けろ

 井狩氏が嘆かわしいとする理由は一つ。

「どうしても世間的には『カジノ=ギャンブル=悪』というイメージが付きまとう。それだけにカジノ合法化は、極力マイナス要因を取り除きながら推し進めてかなければいけない。〝清廉潔白〟といったのもそのためで、やはり特定の利権が絡めばその時点でアウト。まずは推進する企業も自治体も、また政治家も私利私欲を捨て、一致団結して取り組むこと。それぞれにいいものを持ち寄れば、〝日本でも合法化されて良かった〟と誰もが思える理想のカジノ像に近づくと私は確信している」

 米ラスベガス・サンズやMGMリゾーツ、それにマレーシアのゲンティンなど、日本上陸を虎視眈々とうかがう複数のカジノ資本の存在も気になる。もちろんオペレーティングシステムをはじめ、カジノ運営は、そのノウハウを持つ外資に協力を仰ぐ場面も出てこようが「外資を舐めてかかったら、おいしいところだけ持っていかれる。だからこそ日本国内は一致団結する必要がある」と井狩氏は言う。

 9月下旬~10月上旬に召集されるとみられる秋の臨時国会。ギャンブル依存症の問題や凶悪犯罪増加懸念など、カジノ合法化には懸念される様々な問題がある。

 当サイトでは今後、折を見てカジノ関連の特集を組んでいく予定だ。


関連記事


タグ

, , ,

コメント




情報提供をお願いします

当サイトは、読者の皆さまと井戸端会議をする感覚で制作し、運営することを目指しております。

そのため随時、ジャンルを問わずに情報提供をお願いしております。ぜひご協力願えれば幸いです。

ただし何分、現在の運営状況では謝礼をお支払いできる余裕はございません。ぜひ当方の現況をご推察、ご理解のうえ、ご賛同、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

情報提供(各種問い合わせを含む)はこちらをクリックして、必要事項をご記入の上、送信してください。

受信順に拝読させていただきますが、何分少人数で運営しているため返信や回答が遅れるばかりでなく、すべてにおこたえできないことがありますこと、何卒お許しください。