カジノ開業地が決まったって本当?~その真相に迫る!
「政府の方針でカジノ開業は横浜市(山下ふ頭)と大阪市(舞洲)」――一部報道で唐突に流された情報に、カジノ事情に詳しい専門家や識者たちから疑問の声が聞こえてきた。特に専門家たちが首をかしげるのは長年、最有力候補として挙がっていた「沖縄」がスッポリ抜けたこと。裏側にあるのは…。最新のカジノ事情を交え、お伝えする。
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読売新聞が19日の朝刊で報じたカジノ開業の政府方針は、各所で物議を醸している。まず噛みついたのは、本サイトで度々コメントを寄せるカジノ事情に明るい「21世紀エンターテインメントを考える会」代表の井狩友亨氏だ。2020年の東京五輪までに、横浜市と大阪市の2カ所でカジノの開業を目指すとした政府方針に対し、「どこでどうして、こんな具体的な話が出てくるのか不思議でならない」としてこう語る。
「まだ国会で法律(IR推進法=通称カジノ法)が通っていない段階で、政府方針だか何だか知らないが、候補地が決まることはあり得ない。これが事実なら、民主主義の原則にツバする政治の横暴としか言いようがない」
◇横浜の実力者が暗躍?
かつて石原都政時(慎太郎=現次世代の党最高顧問)の1999年、お台場カジノ構想が持ち上がったが、実はそれ以前から沖縄県を筆頭に宮崎県、秋田県、愛知県、そして大阪市や神戸市などの関西圏も早々にカジノ合法化に名乗りを上げていた。横浜でのカジノ合法化は2003年に神奈川県知事になった松沢県政時(成文=現次世代の党衆院議員)や02年に横浜市長になった中田市政時(宏=現次世代の党国対委員長)に初めて言及はあったものの、大きくクローズアップされ始めたのはここ1~2年のこと。カジノ候補地としては、「新参者」という位置付けながら、急速にその存在感を持ち始めたのは「まず菅さん(義偉=官房長官)の存在が大きい。彼はもともと横浜市議から国会議員になった横浜選出の議員。いまや影の総理大臣と言われるほどに力をつけているし、彼が動いた結果だろう」というのは横浜財界に詳しい事情通。
開業地と目される山下ふ頭(約50㌶)は、東京ドーム約11個分という広大な土地だ。「ただカジノを誘致するにしても横浜財界のドンと言われる藤木企業の藤木(幸夫)会長のクビをタテに振らせない限り前へ進まない。おそらく菅さんと藤木会長サイドで話が付いたことで、一気呵成に横浜誘致に舵を取り始めたと見ていいのでは」(同)。
◇ハナから信用していない
いよいよもって政治の力でゴリ押し決定となると、他が黙っていない。特に長年、最有力候補として名前が常に挙がってきた沖縄県。昨年行われた県知事選挙でも「現職だった仲井眞さん(弘多)を応援するため、当初、官邸ではカジノ誘致を公約にすることも考えた。ただ世論との兼ね合いもあり、大きく取り上げなかった」(政界事情通)という話もあったほど。それがまるでなかったかのように、沖縄が冷遇され始めたのにはわけがある。
仲井眞氏を破り当選した翁長雄志知事への風当たりだ。政府の意向に反し、普天間基地の辺野古移設に強硬姿勢で反対する翁長知事に対し、いまだ重要閣僚との面会すら実現していない。野党関係者は呆れ顔でこう話す。
「それこそ沖縄県には基地問題をはじめ、農業政策など重要課題が山積している。本来であれば総理、官房長官はじめ、複数の重要閣僚との面談があってしかるべきなのに、いまだ山口(沖縄)担当大臣と会っただけ。そして今回、カジノに関しても沖縄県を除外した。政府の対応は、まるで度が過ぎた陰湿なイジメ。弱いものイジメして喜ぶ子どものケンカと一緒。情けない」
沖縄で長年カジノ合法化の活動を続けている団体の幹部は「全紙が書けば、そりゃあ無視もできないが、一部報道はあくまでも一部の話。そんなのはハナから信用していない。ふざけた話だ」と憤慨する。また小樽、釧路、苫小牧3市と留寿都村の4カ所でカジノ誘致が進む北海道の観光関係者は「そんな話、ひと言も聞いていない。本当なら寝耳に水だが、不確かな話にはコメントできない」と困惑していた。
◇世論の様子を見るブラフ説
前出、井狩氏がいうには「候補地決定は、それこそ最後の作業。まずは国会で法律が通過し、それから細部を煮詰める。依存症の問題をどうするか、また入場料は取るのか無料にするのか、入場制限はどうするのかなど、先決事項がいっぱい。もっといえば、いまだ風営法適用で表面上は単なる遊技であるパチンコをどうするかなど、厄介な問題が山ほどある。仮に今国会で法律が通ったとしても、北は北海道、南は沖縄まで名乗りを上げている候補地を絞り込むことなど、すぐにはできないし、やればそれこそ反発を食らう」。
細かい問題はほかにもあり、イスラム国からの宣戦布告にあるように、今後、日本はテロの格好のターゲットにされるケースは多くなる。集客力のあるカジノ施設が標的にされたら…、これまで以上の厳重なセキュリティーが求められるのは間違いないのだ。
今回の報道に対し、こんな見方もある。「意外と、新聞記事というのは、様子を探るために使われるケースもある」というのはマスコミ事情に詳しい専門家。「決まってもいないことを、さも決まったように報じ、読者をはじめ国民の反応を探る。感触がよければ。計画を進め、悪ければ引っ込める。今回の一件も、政府筋が読売新聞を動かして書かせたブラフと見るのが自然かも」(同)。
さていろいろ推測の域は脱しないが、今回の読売の報道、額面通りすんなりいきそうにないのだけは確かなようだ。
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