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May , 2024
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安倍首相のヤジって許せる?

2015年5月29日(金)11時58分更新

 憲政以来、これほどヤジで叱責を受けた総理大臣はいただろうか。すぐキレる、すぐヤジる…日本にとって将来を決する重要法案が山積する中、このような稚拙な内閣に任せていいのか。そろそろ国民も目を覚ます時がきているのではなかろうか。

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 28日の安全保障関連法案に関する衆院特別委員会で、民主党の辻元清美議員が、以下のように質問を続けている時だった。

「要するに戦争というのはリアクションがあるんです。ちょっとだけよ、と行って、いつも大きな戦争に広がっているわけです。ですから総理、こうもおっしゃってますよ」

 辻元議員の話が続くなか、いきなり「早く質問しろよ」というヤジが飛んできた。

◇総理大臣のヤジは前代未聞

 それでも辻元議員は「絶対にないという…政治家…」と続けようとしたが、ヤジの発信源が安倍首相だと分かった時点で絶句した。議場からは「『早く質問しろ』とは何だ!」「何てヤジだ!」と怒号に近い叱責の言葉が沸き起こり、騒然となった。10秒以上のタイムラグの後、辻元議員は「委員長、総理大臣が質問者に対して『早く質問しろよ』と言って、ご自身の答弁は延々とされてきたんじゃないですか? 皆さんそうでしょう?」と議員席を見渡す。さすがにこれはまずいと悟った同委員会の浜田委員長は「一回止めます。書記止めてください」と審議を中断させた。

安倍首相の不規則ヤジが、またも物議を醸した

安倍首相の不規則ヤジが、またも物議を醸したが

 審議中断中、当事者となった安倍首相は悪びれることもなく、薄ら笑いを浮かべながら足を組み、腕を組んでいた。審議が再開され、辻元議員の発言が続いた。

「答弁、結構です、もう。『早く質問しろよ』という総理大臣に、いま、もう答弁は結構です。私はね、とてもね、寂しい気分というか、情けない気分になりました。いまね、これ人の生死とか戦争にかかわる話ですよ。ですから、…」

 再びヤジが酷くなって議長が注意する。

「私がね…、私はですね、先ほど大げさなことを申し上げたんではないんです。実際に、…」

三たびヤジで数秒中断。辻元議員は続ける。

「あの、こないだね、ISIL(イスラム国)に2人捕まったりね、邦人がね、テロに狙われているわけです。これはね、世界中で、例えば湾岸戦争などに、ちょっとでも参加している国は非常にその国の国民が、誤解もありますよ。でもテロに狙われたりする率は凄く高くなってる、社会なんですよ。総理はこうおっしゃてます。『起こり得るかもしれないことについて、絶対ないと言い切る政治家は無責任』、去年の今日、(指で床を指し)ここでおっしゃったんですよ。ですからね、起こり得るリスク、総理は目の前のことしか見てない。その後に何が起こるかということをシッカリ考えていただきたいということを申し上げて質問を終わります」

 まあ長くなったが、ざっとこんな感じだ。辻元議員の語尾に「ね」や「よ」をつける独特の語り口調に「生意気そうに聞こえて嫌い」という向きも少なくないが、それは今回の主題ではない。やはり一国の総理大臣が、当該委員である国会議員の発言中にチャチャを入れたり、ヤジを飛ばすなど前代未聞、由々しき事態なのだ。

◇総理大臣は泰然自若が求められる

 安倍首相は今年の2月、当時、政治献金疑惑で渦中にあった西川農相(当時)の責任問題を予算委員会で追及する民主党議員に対し「日教組どうするの」とヤジって物議を醸した。この発言を行った翌日、安倍首相はヤジの理由を、日教組は補助金をもらっていて、その一部が民主党議員にも流れていることも問題だと言いたかったと説明。西川農相の責任を追及する前に、自らを正せという趣旨だったようだ。ところが、これが安倍首相の勘違いだということが発覚、結局、陳謝する羽目になった。

「この時も日教組発言の真偽以前に、総理大臣が予算委員会の場でヤジを飛ばすという前代未聞の行為に、これだけで大問題に発展してもおかしくなかった。しかし一部を除けば、問題を追及するメディアは現れず、安倍首相のヤジ問題はすぐに鎮静化した」というのは本サイトに度々登場する政治ジャーナリストのX氏だ。そして今回の「早く質問しろよ」のヤジである。せめて「早く質問してください」とか「お願いですから、持論はそのあたりで勘弁願って、先に進んでください」などと「です」「ます」調でヤジっていれば、問題はなかった?

「いやいやいや、とんでもない。どんな丁寧な言葉を使おうが総理大臣のヤジは許されない。メディアの中には、『辻元議員の話が長くて、安倍首相のイライラが募っていた』などと、安倍首相を援護するような報道をするメディアもあったが、総理大臣がイライラしてどうする。とくに安保法制など、重要法案が山積している今、誰よりも泰然自若としていなければいけない立場にある人物。常日頃、『私は総理大臣』と胸を張る安倍首相だ。私は、こんな総理大臣に国のかじ取りを任せておいていいのか不安で仕方ない。何より、各種メディアの世論調査で、いまだ内閣支持率が5割を超している。以前から政治どころか国民自体が平和ボケで三流以下に成り下がったといわれているが、いよいよもって亡国国家へと突き進んでいると言わざるを得ない」

◇今や自民党内も自浄作用が働かず

 今回の安倍首相のヤジ問題も、この日、朝刊では朝日や東京新聞、一部スポーツ紙で取り上げた程度で、ほかは表だって問題にはしていない。夕刊紙も日刊ゲンダイが「民主党 安倍首相に懲罰動議出すべきだ!」とかなり辛らつな特集を組んでいたが、目立つのはそれくらい。

「メディアも今や完全に安倍政権の軍門に下ったように、毒を食らわば皿まで…と安倍政権と心中の覚悟でも決めたようなスタンスだ。それにかつての自民党だったら、総理総裁が、もしこんな子どもじみたことをしようものなら、自浄作用が働いて、ヘタすれば内閣総辞職だってあり得た。いまや自浄作用もなく、長いものには巻かれよ体質。国民も結局、右にならえで、何となく安倍政権を支持してしまっている。メディアも自民党議員もこの体たらくでは、いくら民主党が懲罰動議を出したところで、のれんに腕押し、ぬかに釘。まあ、あとはいつも私が言っているように、国民が判断するべき」

 X氏のコメントの中にも「総理大臣は泰然自若としていなければいけない立場」とあったが、イラつくとヤジなどという〝幼稚な手段〟に打って出る安倍首相。果たして国の行く末を任せていい宰相なのか否か、いま一度、国民一人一人が慎重に検討するべきときにきているのではなかろうか。


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