「テレビ紳士録」第2回~跡部昌洋村長
あの人、この人、どんな人?――本サイトご隠居顧問が、テレビで見かける気になる人物を独自目線でウオッチした「テレビ紳士録」。今回は「売り家と唐様で書く三代目」を絵に描いた騒動の主役を務め、全国1718市町村(2014年4月5日現在、総務省調べ)の中で、今一番話題を振り撒く長さんのご登場だ。
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10年ほど前、古希の前後だったと思う。毎年の正月の過ごし方に飽き飽きして、日帰りのバスツアーに参加したことがある。東北自動車道の最初のトイレット休憩でバスを降りようと通路に立った時、5~6歳の子供を連れたママさんが「あ、〇〇チャン、こっちに寄りなさい。おじいさんが通れないでしょ」と、自分の子を座席に引き込んだ。(おっ、きれいで優しそうな奥さんだな)と思いながら、会釈をしてトイレに降り立ったのだが、自分が妙齢の女性から「おじいさん」と言われたことに軽いショックを覚えたものだった。当時、自分の年齢から言って客観的には絶対「おじいさん」で正しい。しかし…。
人間てどうしてこうも身勝手なのか。自分にも孫はいる。会えば「ジィジ」と呼ばれて悪い気がしないだけの年齢的な自覚はある。なのに、孫にはあまり会わないで暮らしているためか、あるいは言葉に横着なかみさんから40年間ずっと「パパ」と呼ばれ続けてきたためか、「おれが〝おじいさん〟かよ」という分不相応な不満が頭をよぎったのには、我ながら苦笑を禁じ得なかった記憶がある。
◇職権乱用の脅しや嫌がらせ
今回、日本中にその名をとどろかせた跡部昌洋・大衡村村長(宮城県)の顔をテレビで拝見した時、なんの脈絡もなく僅か69日間で首相を退いた故宇野宗佑氏の顔とダブって見えてしまった。もちろん、政治家としての地位、貫録、キャリアなどすべての面でお二人を比べるだけで失礼だが、宇野氏の〝指3本〟と跡部氏の〝性行為の強要10回〟がオーバーラップして、顔まで似て見えるから不思議なもんだ。
神楽坂の一流芸者を愛人にしようと言うのに、指3本出されて「30万円か?」と聞いて相手をあきれさせ、果ては首相の座まで棒に振ったエピソードは歴史に残る笑い話だが、跡部村長だって負けていない。村役場の女性職員の訴状によれば、前後10回に及ぶ「性行為の強要」と、1500通ものメールで職権を濫用した脅しや嫌がらせがあったという。村長の職務はそれほどヒマなのか、逆に村の〝政治〟をバリバリこなした上での〝性事〟だったのか。どちらにせよ感心するばかりだが、いずれは衆人の知るところとなり、末代の不名誉を残すことになるとは考えなかったのだろうか。66歳にもなる爺さんがねぇ。
◇年寄り厳禁!?
聞けば跡部氏は祖父、父ともに村長を務めた土地の有力者の家に生まれた3代目だという。そんな恵まれた3代目がコンビニよろしく、なぜ手近で便利な村役場の女性職員をくどきまくったのか。あの宇野元首相でさえ、たとえ笑われようと「30万円」という金額を提示しているではないか。タダで思いを遂げた上、職権を濫用して口を封じようとは、いやしくも村長の肩書を持つものが、虫がよすぎはしないか。
「辞職を選ぶか、それとも解散か」と議会に迫られて、ちゃっかり解散を選び、その後19日朝、辞表を提出したなんて、「土地の有力者の家柄で、66歳で、村で模範になるべき村長でござい」という自覚がまるで感じられないのだ。俗に「初代が苦労して財を成し、二代目がそれを努力して守るが、三代目がそれを遊んで食いつぶす」と言われるから、ほかのことには目をつぶろう。でも、「66歳のいい年をしたジジィ」という自覚だけは忘れずに持っていてもらいたい。若い人たちに「18禁」があるように、年寄りにも「60禁」「70禁」と言うのを作ろうか。えっ?「失禁」? それはご自由としとこうか。