新連載『クレーマー天狗』第3回~アナウンサーたちの笑止千万な解説~
アラカン(還暦)ならぬアラサン(傘寿)世代の本サイトご隠居顧問が、あらゆる話題に斬り込む『クレーマー天狗』。今回、ご隠居がターゲットにしたのは、アナウンサーたちが何気に口にするおかしな解説の数々だった。アジア人に向かって「アジアっぽい顔」って…一体全体どういうこと! ご隠居は怒り心頭に発した。
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◇どうしてメダルにこだわるのかね
あれは中国の人気観光地、九寨溝へ行った時だから、かれこれ七年ほど前になるか。おいらのグループで70歳過ぎの老人が湿地帯に作られた木道を踏み外し、1㍍ほど下へ転げ落ちた。幸い下は草地で擦り傷ひとつなく済んだものの、胸ほどの高さの木道に自力でもどれず四苦八苦。すると、傍観者をかき分けるように屈強な青年が駆け付けてきて、老人を引き上げてくれたのだ。
助け上げた老人のズボンについた泥汚れをはたきながら「ケンチャナヨ?(大丈夫ですか)」と聞いていた所から、韓国から来ていた観光客の一人だと分かった。老人のグループにも何人かの日本の若者はいたのだが、ただ見守るだけ。中にはニヤニヤ妙な笑いを浮かべていた奴もいたのには情けない思いをさせられたもんだ。
以来、その反動もあって、韓国の若者に対して少なからぬ好感を持ち続けていたのだが、先の仁川アジア大会での大小もろもろの疑惑を見たり聞いたりするうちに、あの麗しい光景が夢かまぼろしかと思うくらいに薄れてしまった。個人ではどんなに清く、正しく、美しく生きていても、フェアプレイ精神が求められる世界的な大きなイベントで、組織的な疑惑が生じては…。
だからこそ、メダルの色や数で一喜一憂せず、どんな努力をしてどんなレースや試合をしたかを論じてほしいと思うのに、どのメディアも「ぜひメダルを狙ってほしいですね」「惜しいところでメダルを逃しましたね」なんて、選手本人より強い願望や失望を堂々と口にしたり、記事にしたりする。そんなにメダルが欲しいんなら自分が出るか、強化費を出すかすりゃぁいいのに…と思う。
◇プロが見たまんま伝えてどうするの
それはさておいて、マイクを通じてメダルを欲しがるくせに、どうもアナウンサー諸氏の勉強が足りないのが気になってしょうがない。トランポリンの決勝に出てきたウズベキスタンの選手を見たアナ氏いわく「あの選手、かなりアジアっぽい顔をしてますね」ときたもんだ。ウズベキスタンとかカザフスタンとかは決してヨーロッパの国ではなく、アジア大会に出てくる歴としたアジアの一員なのだ。これを受けた解説の先生もご丁寧に「そう言えば日本人に似た顔ですね」と。
あのね、中央アジアはもちろんのこと、ヨーロッパのすぐ隣にあるトルコの人たちも、生まれたときお尻に蒙古斑が出るのだよ。その昔、蒙古軍が中央アジアを経てトルコまで遠征したからなのかどうか、専門的なことは分からないけど、アジアって広いからいろんな国の人の血が混じっているのよ。
〝見たまんま〟といえば、同じ日にバドミントンの実況を担当したアナ氏も気を付けてね。君は日本と相手の一点ごとのスコアと、「この試合に勝てば44年ぶりの決勝進出が実現します」の繰り返しでしたね。これってテレビを見ていれば分かることばかりで、それでよくアジア大会を担当できたもんだよね。あなた方がいつも選手に向かっていう決まり文句をあなた方にお返ししましょうか。「次のリオまでにはぜひ立派なアナウンサーになっていて欲しいですね」「ぜひ頑張ってほしいですね」。
(本サイトご隠居顧問=当コラムは毎週月曜、木曜の週2回掲載=都合により休載の場合もありますのでご了承ください)
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