「テレビ妖語」~おもしろ略語
かつて某紙で鬼デスクとしてその名を轟かせ、胃腸病院に送り込んだ部下は星の数ほど。今と違って30年ほど前、当時の手書き原稿は赤字で真っ赤っか。そんな本サイトご隠居顧問だからこそ、テレビから流れ出る言葉、映像…おかしければ敏感に反応する…といつもならそう始まるところだが、今回はちょっとご隠居も楽しそう。えっ? なぜって? 「『鉄道』と『新語』と『略語』が大好きな新日本人」に思いを馳せると、これが愉快痛快奇々怪々!? ご隠居の筆もビュワーンビュワーンと超特急並みに走った!
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3月14日は鉄道マニアにとって画期的で大忙しの、記念すべき土曜日だった。まず、構想半世紀に及んだ北陸新幹線の東京ー金沢間の全線開通が日本中のマニアと初物好きを総動員させた。一番列車を見送るために始発駅の東京駅はもちろん、何秒間かの通過列車をカメラか視線で追うためだけの途中駅のホームにさえ、まるでラッシュアワーの通勤電車みたいにぎっしりと詰めかける。終着の金沢駅に至っては、列車から降りる乗客が人ごみでホームに降りられず、列車のデッキで立ち往生するほどだった。しかし、非マニアの筆者でさえ舌を巻いたのが北陸新幹線の美しさだ。色と言い、先頭車両の流線形と言い、性能と言いこれまでの各種新幹線が急にダサく見えるくらい素晴らしく、美しい。カビ臭い褒め言葉だが、あえて言う。これはまさに『走る平安貴婦人』だ。間もなく世界中から高速鉄道の引き合いが殺到するだろう。
◇鉄道マニアあれこれ
しかし、日本人はなぜこうも鉄道が好きなのか。「それは明治の文明開化がイギリスから持ち込まれた鉄道とともに進んでいったからだ」と言うのは無名ながら鉄道の歴史なら何でも来い、という鉄道マニアの一人。「新橋ー横浜間が開通した当時の片道の運賃は〇円で、コメが××斗も買えた」とか、「昭和35年ごろまでは東京ー熱海間にまだSLが走っていた」なんて、どうでもいいようなことを得意げに披歴する男だったっけ。そう言えば、鉄道マニアにはかなりの種類があることを最近になって知って驚いた。もし説明や略語に間違いがあっても年寄りに免じてお許し願いたい。
①まず、マニアの総称として男は鉄男(てつお)、女は鉄子(てつこ)という。すべてはこの二人を両親として生まれた子の守備位置によって呼称が変わってくる。ここからあとは男女の区別がなくなる。
②近年、カメラの性能の進化に反比例して低価格化してきたため、急速に増殖しているのが撮り鉄(とりてつ)。数少なくなったSLや電気機関車の走る雄姿をとらえるためなら、早起きはもちろん、徹夜だって平気。SL二重連、三重連などの情報を得ようものなら、女房、子供ほったらかしで、愛車を駆ってどこへでも出向く。この撮り鉄の中に近年、泣き鉄という新種が誕生した。『北斗星』とか『トワイライト・エクスプレス』など北陸新幹線開業と同時に消えていった寝台特急のラストランには、何をさておいても遠近厭わず馳せ参じ、走り去る引退列車に向かって「今までありがとう!」「さようなら」と叫びながら涙ボロボロこぼしての大泣き。
③今回の北陸新幹線もそうだが、ラストラン列車なら特に、あらゆる努力を払ってもその記念列車のチケットを入手して乗りたがるのが乗り鉄。普段は東北新幹線のグランクラス(グリーン車の上)とか、新潟の日本酒が飲める快速『Shu*Kura』(信越本線)など珍しいものなら何でも乗りに行く。その種族の一つにローカル線各駅停車の全国制覇を目指す乗り鉄もいる。
④時刻表があれば何時間でも遊べるのが紙(かみ)鉄。ペーパー・トラベラーだ。最後にミニ鉄。ミニチュア模型を部屋いっぱいに広げて楽しむマニア。ちなみに初めの例は歴鉄、範囲が鉄道全般に及ぶと博鉄となる。ついでにオマケ。子供に電車を見せるうちに自分がマニアになるのがママ鉄。廃車になった列車の部品なら何でも買いあさるのがくず鉄…。ゴメン、これは冗談です。
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