不定期連載『テレビって奴は』第6回~号泣とは「アイゴー」とかって声を上げて泣くことです~
あと○年と●ヵ月で傘寿を迎える本サイトご隠居顧問が物申す! 常に「テレビはわれら年寄りの最大の親友。だからこそのお節介な忠告です」というご隠居が、今回は各局が繰り広げるオーバーな表現について、冗談も休み休み言いやがれとばかりに釘を刺した。ご隠居顧問の小噺連載『テレビって奴は』の第6回は「〝号泣〟とは『アイゴー』とかって声をあげて泣くことです」。再び聞こえてきた「テレビって奴は」…早速いってみよう。
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何事も数字(視聴率)のためで、だから許されると思っているのかね。とにかく、各局のオーバーな表現は憂うべきものがある。おいらみてぇに背中に苔が生えるような歳になるってぇと(おっと、これなんかもオーバーな表現か)たいがいなことには驚かないが、それでもテレビ欄でひいきにしているAKBの××なんかが「卒業公演で号泣!」てな番組表をみると、何はさておいても手元のリモコンを手にとるね。だって、あんなカワイ子ちゃんが号泣したなんて、年甲斐もなく胸を広げて、出来ることならハグしてやりたくなるじゃねぇの。
◇号泣だ? 詐欺じゃねぇの
見ていたドラマを横取りされたばぁさんが怒るまいことか。「今ちょうどいいところだったのにッ!」。それでも知らん顔をしてるってぇと、「いい歳したジイさんがそんなの見て恥ずかしくないのッ!」。結婚してもうじき50年になるが、歳をとったのを恥ずかしがってたら、生きちゃぁいらんねェし、第一、いい歳ってのは何かい?「そろそろ死んでも〝いい歳〟」ってことかよ?
そんな犠牲を払ってまで見たAKBの号泣ってぇのが何と、一筋の涙を見せただけ。これは明らかに詐欺じゃァねぇの。おれっちの家庭崩壊にどう責任をとってくれるんだ。絶対、訴えてやる!
昔は、いや今でもそうだが、号泣ってのは「号令」「号砲」などの号でお分かりのように「大声を上げて泣く」こと。現代の日本人はたとえ肉親の不幸に見舞われても、人前ではめったに号泣はしなくなった。大概の人は涙を呑み、忍び泣きで耐え忍んでしまう。これがいいことか、悪いことかをものの本で調べてみた。いわく(号泣することによって大きな悲しみによる耐えがたいストレスを幾分かは和らげることができる)とか。その点で悲しみを呑みこんでしまう日本人は、不幸なストレスから立ち直るのに時間がかかるんだって。
◇激怒って言われてもさ…
お隣の韓国の人たちをごらんなさい。あのフェリーの大事故の時、尊い命を奪われた高校生の親たちの中には、床や地べたにごろごろ転がりながら「アイゴー、アイゴー」と大声で叫ぶように泣いていたのをテレビで見た人は多いだろう。あぁいう血の出るような声をあげて泣くことを「号泣」というのです。(合掌)
号泣という表現と東西の横綱を争っているのが「激怒」かな? バラエティー番組によくつかわれる二字熟語だが、おいら駆け出しのころ、上司が1日に1回はこれをやってました。ときどきアルミの灰皿が飛んでくることもありやしたっけ。新聞のテレビ欄に「大物俳優○○が共演の××の発言に大激怒」とあったら野次馬でなくとも飛びつくよね。特においらなんざ、血気盛んだった頃の永六輔さんが外でロケ中に、カメラに向かってスタジオのスタッフを怒鳴りつけてた画面を覚えてるから、こりゃ見ものだと…。ところがどっこい、激怒したはずの大物俳優は、問題の発言者に対して笑いながら「こらッ」と言っただけ。激怒したのはテレビ欄に騙されたおいらだ。そのあと思わず「アイゴー」と大声で叫んでやったよ。コンチクショウメ! ? (ご隠居顧問=次回をお楽しみに)
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